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2022年3月30日 (水)

加工の限界

新品の和包丁は、現代だと精度が悪いものがほとんどです。

過去にはそんな事は無かったのですが、現代品は本当に酷いものばかり・・・。

和包丁は裏が要なので、そこが失敗している時点で、基準がおかしい訳ですから、全てがズレる可能性があります。

特別に裏に歪が無く・・・というところは、将来的にそこまで研ぎ進んだ場合の話なので、それまでに修正修理を行う可能性はありますから、そこまで気にしなくても良いと思いますが、初期段階で裏に刃が出なかったり、反りが強く砥石が乗らなかったりすると、もう致命的です。

研ぎ面も削りと磨きで加工され、多くが砥石に当たらない状態ですし、向きがおかしく、磨きで線だけ付けられたものも。

これらは、現代の砥石の能力や、修正器などの進化により、人が研いで使う範囲に、精度とご縁が出来てきましたから、余計に目立ってしまっています。

多少ズレた程度なら、許容範囲とも思いますが、異常なものが多すぎるので、売る側も買う側も、色々と苦労をする事が多いです。

新品の和包丁だと、いきなり全てに手を入れる訳にもいかず、研いで使う範囲のみの調整が基本ですが、それだと直しきれない物の割合が多くあります。

ある程度使い込んでから、直しに出して頂ければ、全面削り直しも行いますが、初期の見た目は失われてしまいます。

こういう仕事を、うちでは良くお受けしています。

これに近いところで、最近多いようですが、なんとなく機械加工をし、見た目だけ綺麗にして、そこに小刃と裏押しだけで出している所は、結局、初期の購入時に戻してるだけです。

加工している条件が、新品作成時と同じでは、当然の事ですよね。

当方だと、研ぎ面は全面砥石に当たる所まで、ほぼ持っていきますし、磨きも手磨きで行い、研ぎ面が見た目以上に研ぎにくくなる状態には、ならないようにしています。

そもそも、機械での加工の時点で、それなりと言われる職人レベルの手研ぎより、精度が良い状態でスタートしていますから、基本のレベルが違いますし、実際に加工をしたものを手にされた方は、現在よりも格段に扱いやすくなるはずです。

条件が整わない場合、状態は良くなっても、少し劣る場合もありますが、根本的にそれが製品としてであったり、それまでの使い方などの影響で、基本がズレすぎている場合です。

研磨や研ぎと言われるものは、減らして調整をするしかありません。

ですから、初期段階から、出来る限り良い条件のものを、購入する事が必要だと思います。

メーカー品としては、刃物の性質は良いのに研磨が悪い場合や、研磨は良いのに刃物の性質が悪い場合もあります。

刃物のランクによっては、それらの条件を出来る限り整えて、販売される事もありますので、そういったものを是非手にして頂きたいと思います。

価格が高いと言われる事もありますが、それだけの手間をかけ、良い状態にして販売されているので、購入後の事を考えると、決して高くはならないと思います。

10万で買ってごみになるより、15万で買って最後まで安心して使える事。

これは、どの業界でもある事だと思います。

ちなみに、安いランク物の場合、そこまでは手を加えられないので、購入後に自力で出費をし、当方のような所にお出し頂くのが良いと思います。

 

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