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2023年1月11日 (水)

ただ刃を付ければ良い訳ではない

研ぎを行うという事は、刃を付ける事とされます。

それは確かにその通りですが、刃を付けるだけでは、その刃物は使い物になりません。

実際に、なんとなく上手い風に研ぎが出来ているのに、使い勝手が悪い・・・、まともに使えない・・・、切れる感じがあまりしない・・・、というご相談は、良くありますから、良い例だと思います。

この刃付けの事は、小刃にも繋がる事ですが、まともな形や計算もされていない面に、適当な小刃を付けても、それは刃は付いているだけで、良い研ぎだとは思えないはずです。

その理由は簡単で、面が使用で想定される状況に対し、適切ではないので、その先の小刃を付ける事で、より悪化させている状態だからです。

プロに依頼したのに、良い状況で戻って来なかった!とおっしゃる方も多いですが、まともなプロの割合が、どのくらいいると思いますか?

各分野において、その刃物の熟知し、思うように加工やバランス取りが出来て、そこに刃物の性能や使用環境に合わせ、刃付けまで行える事が条件です。

そもそも、その刃物の使用自体、まともに理解できている人が、相当少ないですし、自分が使えない刃物の事を、どんなに形作って、研いで刃付けをしたとしても、それで良いのかどうかの判断を、どうして言えるのでしょうか?

こういう形にして、こうやって磨いて、こうやって刃を付けて完成だよ!、と教わっただけで、職人と言えるレベルなら、いくらでもいますが、実際に実用の刃物というのは、そういうレベルで完成されているからこそ、おかしい事が沢山あります。

私は加工の中で、研ぐ事を前提として、形を作って、研ぎ行って、磨きを入れています。

研いで使えないと、そういう事が理解できないので、それではまともな答えに近づく事は難しいと考えます。

綺麗に見せる事に意識が行き過ぎて、使い物にならなくなっているものが、世の中には非常に多くありますから、その辺りは実用に寄せて研ぎを行う事で、色々な事が改善出来る事は、知っておいていただきたいと思います。

そして、その綺麗さを求めているのは、性能より見た目で満足をしてしまうという、末端のお客様達が影響をしている事は、十分に理解すべき事です。

私の思う刃物のまともさは、綺麗に見える事や、初期の切れ味が良いと思われる事だけではなく、その先の事まで考えた研ぎを行う事です。

実用での意味を理解する方々からは、こういった部分に対し、価値を感じて頂けている事が、非常に多くあります。

どんな刃物でもそうですが、最低限度のレベルよりは、刃物を使えるようになって、その刃物をグチャグチャにした状態から、元の性能や形状に近く直せる事は、確実に必要だと思っています。

もちろん、板材からの削り出しも出来ますし、そのくらいの勉強は当然の事と思っています。

刃物を減らして直したり、刃付けをしたり、性能を上げる事が、私の仕事ですから、何でもできるくらいの状態まで、色々な知識と技術を持っていないと、お金を頂いて技術を提供する事は、プロとして当然の事だと思っています。

条件が整わず、不可能な事はたまにありますが、機材や部材の問題で作業が出来なかったり、刃物の性質が低く、お客様の希望される範囲に収まらないなど、そういう範囲がほとんどなので、致し方ない事と思って、その辺りは諦めてください。

やった事が無い技術があったとして、それが業者さんからの依頼の場合でも、ほとんどの技術は、教わればできない事はないタイプで、時間を貰えれば身に着けてご提供はしますので、機械や部材の提供を頂ければと思います。

そのくらいまで出来る人がやって、ようやくプロや職人を超えて、その先に到達出来るのだろうと思っています。

 

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