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2023年6月30日 (金)

研ぐべき場所と、そうではない場所

刃物は研いで、刃を再生する事が出来ますから、研ぎとは重要な作業になります。

しかし、研ぎの根本の部分になりますが、研いで良い場所と、そうではない場所があります。

ここで言う「研いではいけない場所」は、私達のような刃物研磨の本職の話ではなく、あくまでも素人の方や仕事で刃物を使うプロの方など、一般範囲の方々の場合です。

分かりやすい例をいくつかだけ挙げますが、鋏(ハサミ)類、片刃和包丁、和剃刀、鉋、などの部類は、片側のみが研ぎの範囲になります。

研ぎの範囲と言うと、裏側は研いではいけないの???と思うかもしれませんが、研いではいけないのではなく、軽く刃先を仕上げ砥石で馴染ませる程度か、裏が出なくなったら、軽く中研ぎか仕上げ研ぎで薄く復活させる程度までです。

それだったら、裏も研いでいる事になるのでは???と思われると思いますが、それもおっしゃる通りですが、研ぎを行うと書いてしまうと、それを誤解する方も多いようなので、表側で研いで刃を出して、裏で軽く調整という意味で、あえて書かせて頂きました。

もし裏を研ぎ過ぎたら、直せないんですか???と聞かれる事がありますが、想定される研ぎすぎた状態までは、大体は直す事が出来ます。

しかし、べた研ぎを完全にしてしまった場合で、いわゆる裏鋤(うらすき、削りで作った溝の事)が見当たらない状態や、それに近い状態まで進んでしまっていると、製造方法によっては、裏の鋤直しを行っても、もう戻せない事がありますので、いつか直してもらえば大丈夫!と思うのは、かなり危険な考えです。

特に、鋼と地金を合わせて作られた、いわゆる合わせ刃物の場合、裏側に鋼がありますので、裏を研ぐという事は、鋼を減らす事になってしまい、本来は表から研いで、刃先だけを形成するものが、無駄に裏の刃になる鋼を削ってしまっている状態なので、削りシロが無く、裏鋤が出来ないという事もあります。

全鋼の場合でも、全体を削って刃を付けられるとはいえ、そこまで裏がベタになれば、身が薄くなっていますから、そこから削り出しを行って、どのくらいの強度を残せるのか、その辺りは状態次第です。

刃物を購入当初から、使用の末期まで、100%の状態維持をして、研いで使っていく事は、まず不可能ではありますが、それでも、やってはいけない事をやってしまう場合と、やってはいけない事を避けて通って来たものとでは、その後の修正修理での戻り具合も、大きく違う形になります。

この辺りは、当店で刃物をご購入頂く際に、ご質問を頂ければ、必要範囲のご説明として、お話をさせて頂きます。

 

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