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2023年9月30日 (土)

研磨さえ良ければ・・・

お客様が刃物を購入されて、直ぐに当店へ研磨のご依頼を頂くケースが、結構あるというお話は、過去にも記載をした事がありますが、今回もその系統のお話です。

刃物を購入して直ぐは、良い状態でそのまま使って不満が無いレベルのモノは、ほとんど存在していません。

その理由は、機械加工による製造が基本となっている事や、そこまで研ぎと言われる範囲に、コストをかけていない事が挙げられます。

また、それっぽい事をやっていても、実際にはそこまでのレベルではなく、多少改善された程度であったり、残念な事も多いと言われています。

最悪の場合、いわゆる研ぎは受けて貰えず、機械加工として、刃物の初期化作業しか無く、新品のように戻ったとしても、あくまでもそこレベルで終わりになるので、求めているのはそういう事ではない・・・と、かなり苛立つ方もいらっしゃいます。

私が良くおすすめをするのは、まず購入時点で、そのまま使えるかどうか、試して頂く事です。

使ってみて、ご自身が今まで使ってきた刃物と比べ、どう違いがあるのかや、そのままでどこまで使えるのかは、多少なりともまずは感じ取っていただきたいです。

また、研ぎがされたものであったとしても、最上級を求めない範囲としてみて、まだ不足があるかどうかは重要です。

不足を感じたら、改善をどうしたいのかを考えつつ、ご依頼を頂ければと思います。

2割程度と結構な割合で、構成を最初から作り直す必要が出て来る事もあります。

その場合、歪取りから入り、全体的な削りによる加工と、手研ぎと合わせた精度や研ぎやすさの改善を行い、最終的に刃付けをするような形になるので、かなりの大掛かりな加工になります。

研ぎがされていないにしても、ご自身で研ぎを行って、どうもまとまりが出なかったり、上手く研げないと感じる場面が出て来る場合、なぜそのまま研いでもダメなのかというと、つまりこういう事になります。

刃の性質が悪くない事は結構多いのですが、結局研磨が良くないので、研ぎにくかったり、まともに研げなかったり、刃というものが作りにくい条件になってしまっている訳ですから、その為の改善は、削り直しから入る研磨とまともな手研ぎとなります。

厳密に考えると、固定器具などを使った加工が行われれば、正しく形が作れると勘違いをされる方も多いのですが、もちろん何も無ければ、そのように加工が出来ます。

しかし、業界でその手の加工や、全自動による機械加工で、精度の出た研磨が出来ない理由は、刃物が動く事にあります。

刃物は熱処理され、緊張感を持っている金属ですし、それぞれの部位が支え合っています。

それらのバランスが崩れたり、元々熱処理でのムラなどがあれば、全て加工時に癖として出てきます。

つまり、そういった加工を正しく行おうとしても、行えないのが事実としてあるので、これなら大丈夫という事はありません。

そうなると、かなりの精度を持たせる歪取りを行う能力や、機械加工で自由に造形出来る技術など、それらが必要になりますが、残念ながらその辺りはかなり難しい技術ですし、加工にかなり時間もかかるので、多くが流れ作業的に行われ、一つずつに対しての時間と技術とコストを盛り込めないというのもあるでしょう。

その理由は、刃物を購入する際に、少しでも安くと思われる事が多いからです。

刃物にコストをかけ、研磨にコストをかければ、それだけの製品が完成しますが、そうできない理由もあったりします。

簡単にだけ説明をしましたが、研磨の範囲をメインとした考えの中で、刃物を改善に導く為のお話ではありましたが、色々な事が関係しているという事を理解した上で、どこに研磨や研ぎを出すのか、良く考えてみてください。

実用品である刃物は、実用品としての研磨や研ぎが必要になります。

その事を理解し、どれだけの考えを持って、その刃物と向き合うのかで、かなり良い刃物ライフが送れると思います。

私自身、自分で使う刃物は、もちろん基本的に自分で研磨をし、研ぎを行っています。

その中で色々な加工をし、色々と試していますが、余程の無理な事や、冒険をし過ぎない限り、市販のそのままより、明らかに良い状態で使えていますので、まずは基本構成を変え、そこにレベルの高い研ぎをしっかりと行う事で、こうして刃物を使う事に対し、ストレスを無くす事が出来る事は、自らが体験をしている事です。

色々と苦労をされている方であれば、特にこのお話は良く分かる事だと思いますので、是非ご相談ください。

内容次第にはなりますが、改善するケースがほとんどなので、決して損にはならないと思います。

 

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