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2024年3月22日 (金)

影響はあるのか?

和包丁の裏鋤(うらすき)に関しては、かなりこだわりがあります。

大きな要の部分ですから、この加工がまともに出来ないというのは、絶対にありえない事です。

良い裏鋤とは、浅めで綺麗にと思われている方がいらっしゃいますが、それは過去の話になりつつありますが、それについて説明を致します。

浅めでギリギリのRで裏を作るのは、確かに利点はあります。

食材への食い込み時に、Rが深いと裏側は包丁は入ろうとします。

そうでなくても片刃である以上、負担がかかる鎬のある側から、平面(ここで言う平面は裏鋤は無しと考え裏押しの刃側と峰側の位置関係が平面という意味です)の側へ曲がって刃が入ろうとする性質がありますから、これは自然の事です。

更に、切断が開始されて直ぐ、裏の鋤が深く入っている場合、その深さの影響もあって、更に裏側へ刃が入ろうとする事もあるのです。

そして、裏押しを行う際に、鋤が浅ければ浅い程、軽い研ぎで押しの量を増やす事も出来ますので、裏押しが無くなってもすぐに復活しやすいというのはあります。

裏押しとは、現代でいう所の裏研ぎだと思って頂ければ分かりやすいでしょう。

もう一点、歪(ひずみ)に関して言えば、裏鋤が深い方が、歪が出やすい傾向はありますし、強度は多少強くなる可能性はあります。

そう考えると、浅い方が良いと思う方も多いでしょう。

ただ、本当に浅い裏鋤は、仕上げ砥石だけでも押し部が広がってしまう場合もありますし、綺麗に浅く鋤が成功している例はかなり少ないです。

また、裏鋤が浅い事で、使用が進むと、簡単にべた裏へと変わってしまう事が多いです。

気軽に研いで気軽に使おうと思っても、直ぐに調整や修正の時期が来るというのが、裏鋤が浅い事による影響です。

そう考えると、ある程度の深さは必要だと考える方も多いです。

私個人としては、それなりに深さがある方が、安心して使いやすいと考えています。

構造によっても良し悪しがありますので、色々と様子を見ながらの調整としていますが、本焼や全鋼であったり、鋼が十分にあるのなら、深めでの加工を推奨します。

将来性を考えるのであれば、浅めに調整をしても良いと思いますし、部分的な調整のみとして、全体を鋤き直さないという選択肢もあると思いますが、そういった事への理解がある業界ではないので、意味も理解出来ずに変な加工だと思われて終わるのかもしれません。

実際に色々と試した中で、それは一つの方法として、ありだと感じていますので、ご興味がある方はそれも視野に入れて頂いても良いと思います。

 

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