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2024年6月

2024年6月30日 (日)

正しく研いでもズレていきます

和包丁は鎬(しのぎ)があり、そこを境目として、平(ひら)と呼ばれる銘切り部と、刃付けを行う研ぎ面である切刃(きりは、切り刃)に分かれています。

その意味については、存じていませんが、日本刀の流れから来たものだと聞いた事があります。

しかし、日本刀は両刃(正式には諸刃、もろは)では?と考えると思いますが、昔の和包丁は両刃だったそうです。

そこからいつ変わったのかも分かりませんが、片刃になり、その後、裏側には裏鋤(うらすき)が出来ました。

その鎬の境目の山となった線の事を、鎬筋とも呼びますが、鎬線と呼ぶ方もいます。

和包丁の世界では、鎬線が良く使われますので、そちらで覚えておけば大丈夫です。

その鎬線は、最初は結構揃っているものも中にはありますが、基本的には完全に揃っているものはほぼありませんので、そこに期待は持たない方が良いです。

最初にそれなりに揃っていたとしても、研いで使っていくと、段々と線が合わなくなったり、線が見えにくくなる事があります。

これは、仕様上、仕方がないと思える部分です。

加工のやり方によりますが、多くは平面が平(ひら)と呼ばれていても、平(たいら)ではありません。

実際の面構成は、少し軽い鋤の入った状態になっています。

その為、どんなに研ぎ面を正しく研いで使い進んだとしても、平面が性格な平面ではありませんから、線がズレていくのです。

これは立体物として言える、2面構成が同じバランス状況になっている事という条件から外れる為です。

ですから、いつかズレてもおかしい訳ではありません。

ただ、気になる方には気になる事なので、鎬線を直して欲しいと言われる事がありますが、100%完全にする事は難しいです。

特に生産後で使用中の物は、色々な直しが必要になり、柄も付いていますから、削りの向きも限られるからです。

面の仕上げ直しも、木砥のように斜め当てをする場合、やはり柄があれば出来ませんし、鏡面などの磨きも同じです。

そういった事を回避するために、ヘアラインでの仕上げを当方では多く用いています。

目を揃えたり、形を整える為には、色々な条件が必要になります。

ある程度までなら研ぎ面とのバランスで位置を変える事は出来ますから、修理や調整の際にご希望をお伝えください。

必要以上に削る可能性がありますので、どこまで直すのかによりますし、金額も上がりますが、今の位置関係に合わせた設定までなら、調整は大体で出来ます。

 

2024年6月29日 (土)

イメチェン

刃物の分野にもイメチェンはあります!

荒いヘアラインの刃物に対し、磨きを多く入れて、光沢を出してみたり。

鏡面の刃物を木砥仕上げにしてみたり。

鋭く尖った先端を、角ばらせてから丸くしてみたり。

長く幅の広い刃物を、短めで細身にしてみたり。

片刃の刃物を、両刃に変えてみたり。

そんな感じで、色々と変化を加えて、ご自身の思う刃物にする事も可能です。

構造上で、どうしても無理な事は出てきてしまいますが、可能である限り、当方ではお受けしています。

様々な状況に対応できるのは、色々な刃物の研磨が可能で、色々な技術を持っているからです。

板材から削り出しで刃物の形を作る事も出来ますので、そういった技術は変化を加える場面でも生きてきます。

一般的には一人で全て学び、やるような範囲ではないので、それぞれが適当だと思われる事もありますが、それなりに深く広くでやっていますので、意外と加工がまともに出来る幅は深く広いです。

刃物は最初、良い形をしていると思いますが、それが研いで小さくなると、使い勝手が変わってしまう事も多いです。

また、たまたま刃物が途中から折れてしまったり、大きく損傷をしてしまった場合、使える部位で何か出来ないかと、ご相談を頂く事もありますが、イメチェンでの再活躍をおすすめさせて頂いています。

また、刃物を購入し、形を変えたいという事で、ご希望に合わせて加工をする例もあります。

小さいものから大きい物への変化は100%出来ませんが、大きい物から小さい物への変化は可能です。

今お持ちの刃物で、使いどころを失っているものがあれば、是非ご相談ください。

上手くいけば、最初からそういう刃物だったのではないか?と思う程に、しっくりくるものが完成すると思います!

 

2024年6月28日 (金)

裏鋤(うらすき)のお話

裏鋤(うらすき)とは何か???と、たまにご質問を頂きますが、簡単に説明をしますと、凹みを作る事で、研ぎの際に当たる領域を最、低限度に調整された状態を作る事です。

良く知られる範囲だと、和包丁がそれにあたりますが、現代の和包丁のほとんどは、機械で裏側に丸く掘り込みを入れ、それを裏鋤と呼んでいますが、昔は違いました。

そういった機械が無い時代、他の刃物でもまだ使われている手法として、銑(せん)と呼ばれる刃物のようなもので、少しずつ削り混むような、鋤く(すく)作業をして凹みを付けた事から、裏を鋤く作業で、裏鋤という言葉が残っています。

この意味を知れば、正式な呼び名が、裏鋤である事も理解できるでしょう。

以前に見た事があるのは、様々な業界において、裏透きと書いてある例が多かったです。

ほとんどの場合、ひらがなで書かれているのですが、正式な字が分からない方も多いのだと思います。

現代では銑鋤(せんを使ってすく事)を行っていませんので、裏すきや裏スキや裏透きでも良いと思いますが、名残はそのまま使われる事も多いので、裏鋤と私は使っています。

今でも銑による鋤が行われている事が多いのは、切出小刀の裏側や、鉋の裏側です。

裏押しを行う際に、刃が出やすいようにする事や、設定を減らして平面研ぎが行いやすくしてある状態です。

これが無いと、べた研ぎで裏を研ぐ事になりますが、可能ではあっても、精度を高く研ぐのは、相当難しくなります。

裏鋤はどの刃物においても、非常に重要な作業です。

銑鋤と機械鋤の違いで言えば、銑鋤は同一回転による一定形状の加工と異なり、深く入れたい部位と浅く入れたい部位に合わせ、鋤量を変えられる事にあります。

機械だと、円での当てが通常ですから、部分的な調整は難しく、後の崩れ量は多くはっきり出やすいとも言えます。

ちなみに、裏鋤を正式な意味で、銑鋤として行う場合、熱処理後は加工不可になりますから、機械で行うしかありません。

手作り刃物の感じで思い浮かべて頂ければ分かるかと思いますが、焼き入れ前に整形をほぼ終え、そこから熱処理を経て、最後に研ぎ上げて完成という例が多いのですが、銑は硬度の高い刃物のようなものでしかなので、熱処理後の鋼部にはもうかかりません。

その為、熱処理前に行われる必要があります。

熱処理で刃物の形が色々変わってしまったら、その鋤は想定通りの形として残りませんから、難しい加工条件の一つだと思います。

現代では、板材のような状態出で鍛えを行い、熱処理後に削り出しで作成されますから、裏鋤は機械で行う方法しかありません。

当方には、様々な裏鋤を行える環境が整っており、色々な刃物に対応できるようにしてあります。

細身の物から、幅の広い物まで、裏鋤は必須の技術ですが、これが非常に難しい為、正しく加工を出来るところは少ないと聞きます。

まず基準として必要な部分が裏鋤にはありますから、裏鋤の上手下手は、かなり気にした方が良い部分だと思います。

2024年6月27日 (木)

安い方が良いという気持ちは分かります

研磨や研ぎの価格だけを見た場合、安い方が良いという気持ちは凄く分かります。

私も何でもかんでも高くても気にしないとか、その金額の内容を確認もせず、大金を払うつもりはありませんので・・・。

ただ、必要に応じて、必要な金額を支払う事は、重要な事だと思います。

なぜなら、そこを削減する事で、後でもっと大きな出費が待っている可能性があるからです。

例えば、今のうちに大きなサビを取っておけば、これ以上広がる事は無かったのに、価格を抑えようとしてサビは無視して加工の依頼をし、その後そのサビが深く広くなって、穴が空いて直せなくなった・・・と言う例があります。

また、欠けがそれなりにあって、いずれ直るだろうと思い、必要箇所だけの研ぎを依頼して済ませたけれど、その欠けた部分から更に欠けと亀裂が広がり、直しの金額が高額となり、刃物サイズが小さすぎて使えなくなる見込みで、廃棄せざるを得なくなった、などもあります。

いま必要かどうかも大事なので、削減したい気持ちは分かりますが、この先にそれを削減する事で、先で何が起こるのかという事まで把握し、それを明確に理解したら、今やっておくべき事というのは、非常に多くあります。

ちょっとだけだから・・・は、良く考えられる事ですが、そのちょっとと思っている事すら、実は大きな問題の可能性もある訳ですし、知識と技術のある方から、具体的な説明をしっかりと受け、それでも覚悟があって今は削減をするのか、良く考えてみてください。

当方では、必要以上の事はご案内しません。

分かりやすく言うと、例えばですが、雑に使うから何となく使えれば良いと言われている刃物に、高精度で鏡面仕上げや最高級の手研ぎを付けておすすめするなど、完全に無意味な事ですよね。

また、必要な範囲が2か所の修理なのに、全部を無理に含めて10か所分をやった方がいいですよ!と、嘘をつくようなご提案ももちろんしません。

何をどこまでやるかは、最終的にはお客様の判断におまかせをしますが、ただ金額を安くしたいという理由だけで、内容を削減するのは、良く無い事も多いですから、折角まともに直したいと思うのであれば、必要範囲まではやった方が良いでしょう。

あとは、見た目の部分に金額を使い、修理範囲は2の次という例もありますが、その見た目を維持するにも、基本の直しがあってからだと思います。

また、どこの誰に加工を依頼するかで、その加工がどういったやり方や結果になるか、その辺りはしっかりと判断して頂きたいと思います。

当方では良くある事で、最後の砦のような感じで、恐る恐るご利用になられる方が結構いらっしゃいまして、どうせここも駄目なのだろうと諦め半分で、もう頼もうと思えるところが無いと、悲痛の叫びでご依頼なさってくる方がいらっしゃいます。

色々なメーカーや職人の所で、価格と内容を見てきて、大丈夫だと思ってお願いをしたけれど、思うような結果では無かったし、言われたほどの結果でもなかったという事で、ご不満を抱えている方は非常に多いです。

その間に、刃物はどんどん削り小さくなり、使っている量よりも、直している量の方が多いと、苦笑いでお話になる方もいらっしゃるくらいです。

同じような金額でも、加工の技術や使う機材や部材なども異なりますし、高いから必ず良いとも限りませんから、内容と金額とご自身の満足の範囲が一致するところで、是非お願いをしてください。

少なくとも、明らかに安く速い所で、他より絶対的に良かったという声は一切ありませんから、値段相応の部分はそれなりにあるかと思います。

購入に関してのお話も一応しておきます。

例えばですが、「1万円、3万円、10万円、20万円」の製品があり、求めている内容が3万円なのに、20万円をおすすめするような例もあります。

これも当方では、内容とご予算を伺い、それが一致していれば、3万円のものをおすすめします。

逆に、商売としてもっと高い物を売り込まないんですか?と、言われてしまう事も何度かありましたが、必要以上でも以下でも、そこには求める内容が無ければ、的確なアドバイスをしたとは言えませんから、私は意味もなく、高い方をおすすめしたり、安い方をおすすめする事はありません。

内容が金額と一致していない場合は、その内容はこの辺りなので、予算を変更してこちらにされた方が・・・とお話する事はありますが、それはまた妥当との判断からです。

稀に、望むものは非常に多く、一般的なプロ以上の細かい内容の指定があるのに、予算がとんでもなく低い方がいらっしゃるのですが、その内容をその金額では絶対に買えませんよ・・・と、残念なお話もしなければならなかったりします。

予算を優先するか、内容を優先するかで、おすすめの内容は当然変わりますから、その辺りはご自身で決定をし、満足な買い物をなさって頂きたいと思います。

 

2024年6月26日 (水)

当方の和包丁の研磨には特徴があります

当方で和包丁を研磨する場合、良くあるような新品の包丁に刃付けをしているのとは、大きな違いがあります。

最初の段階としては、機械加工で製造されており、その際の危険防止や形状の変化を嫌う為、刃先は分厚いままで加工を続け、最後に小刃のように段刃で仕上げている事が一般的ですが、それだと刃先の厚みが厚すぎる事や、研ぎ面の凹凸がかなり残っていて、面の構成が不安定となっており、研ぎが安定して行いにくい事もあります。

また、刃が実際に出た状態で、しかも砥石でそれを正しく作り上げた状態ではありませんから、刃が均等に直ぐに出る事もありません。

それらは当方での加工の場合、精度の高い砥石を使った手研ぎでの仕上げになりますので、問題は解決されます。

次回以降、お客様が研ぐ場面において、しっかりと精度の高い面として面直しをした砥石で研げば、砥石がまともに当たらない事はありません。

そして、刃先の刃は直ぐに研いで出る程度しか、小刃は付いていませんので、凄く長い時間かかるような事もありませんから、当方で加工をした時だけが良いような状況ではありませんので、その先の事も考えての構成となっています。

それを当方では、「本式の研ぎ」と呼んでいます。

昔から良く使われる、本刃付けという言葉は、曖昧な使われ方が多く、絶対的にこれだ!と言える内容に収まっていないので、私はその言葉を基本的には使いません。

また、全体的な加工を加えた場合、歪取りや裏の精度も当然良くなりますので、和包丁で良くあるような、裏反りが強く、まともに裏押しが出来ないような状態にはなりませんから、それだけで見ても、相当な改善と言えるでしょう。

和包丁はレベルの高いプロ基準に合わせての作業として、研磨と手研ぎと刃付けを行っていますので、その完成度は高いです。

ちなみに、機械作業の時点で、一般的な業者が行う研ぎ面の構成よりも、精度は高いです。

そもそも、一般的に良く行われる回転円砥石の機械での作業は、当方では行いませんので、大きな穴上の砥石が当たらない場所は、ほぼ出来ないと言えます。

その分、加工コストはかなり高くなりますが、和包丁分野における機械作業での面とは異なり、機械にしてはかなり精度が高い結果を生み出せています。

その為、その後の手研ぎでは、私自身での加工の精度に追い付いており、8~9割くらいは直ぐに砥石に対して当たる構成となっていますから、和包丁の初期の研ぎで苦労をされた事がある方なら、この差の違いはお分かり頂けるかと思います。

そう考えますと、当方で行っている、和包丁の機械研磨(刃付けは手研ぎ)までの加工として「リセット作業」がありますが、これはかなりお得だと言えます。

全体的な整形やサビや欠け取りも必要に応じて行いつつ、研ぎ面は本式の研ぎではありませんが、そのくらいの面精度での加工を完了しており、最後の刃付けは通常と同じ手研ぎによる刃付けです。

本式の研ぎを行う場合と比べれば、加工全体で見て、手の込んだ作業を行うかどうかの違いが色々とありますので、違いは出てしまいますが、それでも今までの状態と比べると、かなりお得な内容ですから、価値は十分にあるでしょう。

機械加工までの研磨を依頼し、見た目は新品のようになったり、綺麗になって戻って来ても、また面の作り直しからスタートという事が当たり前ですが、その苦労はありませんから、それも当方で機械加工を行った際の差でもあります。

このように、ただ研ぎました!で終わらせるのではなく、その後の刃物が使いやすくなる事や、手を伸ばしてそれを使いたいと思う事を、当方では大切に考えていますので、主役になれる和包丁の研ぎを、当店で是非ご利用ください。

こだわりを強くお持ちの方は、更に細かく色々な設定のご要望を頂ければ、それに準じて作業を致します。

価格と納期のご負担は増えますが、理想に近づける為の内容としては、色々な範囲での対応が可能です。

当店の和包丁の研磨のページはこちらです。

2024年6月25日 (火)

日本刀研磨は昔から特に力を入れています!

当方が独学で得た日本刀研磨の技術は、試斬大会での優勝や上位入賞の実績も多くあります。

ほとんどの方は、当方で研いだ事を知られたくないので、人には伝えていないとおっしゃっていましたが、過去から現在まで、多くの上位入賞を支えて来ました。

また、居合抜刀試斬での研究を重ねる方々からも、今まででは難しかった技術が、達成できたというお声も頂いた事が何度もあります。

それを聞いて、腕で斬れないからだとおっしゃる方も、未だにいらっしゃるようですが、日本刀の体配やバランスや刃の状態を実際に見れば、これでは無理だな・・・と納得して頂ける方がかなり多い状況からの脱出なので、明らかに状態が良い日本刀を使用し、斬れないのを言い訳にしているのではなく、根本的な解決に近づいたという意味も含まれますので、その辺りは誤解なさらないでください。

日本刀の研磨は、居合用と呼ばれたり、実用と一部では言われていた研磨が存在していましたが、今までずっと美術研磨の線上にあり、そこから脱する事はまずありませんでした。

その為、不足を感じた使用者の方がご自身で研究をし、必死に研いでいた例もあったようですが、最初は何とかなる事があっても、段々と形が崩れ、左右のバランスも崩れて行けば、当然まともに斬れなく無くなりますので、逆効果な部分もあったようです。

しかも、安く済ませる為に、表面だけ綺麗にして終わらせたり、刃先側だけが明らかに丸く加工され、それで刃付けをしたという形にしているようですが、その程度では刃物である以上、まともに斬れるはずもありません。

それと、刃筋と言われる筋は、正確には正しくない事がありますが、それは日本刀の研磨や拵の問題により、使う人がそれを信じて合わせた結果の場合もあります。

そういった事も解決できるだけ、まともな状態を作り出す事が、当方では可能となっています。

美術刀は美術研磨の研師にお願いをすれば良いですが、実用刀は実用の研磨を行わないと、日本刀の性能を素直に発揮する事は出来ません。

日本刀は振り回して使うから、状態など関係ないというような趣旨でおっしゃっている方もいらっしゃいますが、思っているよりもそう簡単な話ではありません。

無駄な動きや無駄な力から解放される事で、より良い綺麗な動きにも変わります。

現代では、実際に戦闘に使う事はありませんので、現代の中での結果に合わせた研磨が必要だと考えます。

私自身、過去に試斬経験も重ね、色々な斬り方も目の前で見て、まともな研究をされている方からもご意見を集めながら、現在の日本刀研磨を確立してきましたので、現状の日本刀の斬れ味に対し、ご不満が明確にある方であれば、今より悪化する事はまずありません。

見た目ではなく、性能で勝負をと思う方は、是非とも当方の実用研磨をご利用ください。

他刃物の研磨で培った技術を色々と多く含め、刃物としての日本刀の研磨を形にしています。

 

2024年6月24日 (月)

これでいいのか?????

私は色々な技術ものに対し、かなり厳しい目で見ています。

それはただ製品が良い悪いではなく、何を考えてこういう仕様にしているのか?なども含め、様々な角度から考え、どういった方達がその製品と合うのかを大切に考えているからです。

ただ入荷して売って、それで利益が出るだけなら、どこの誰が販売しても同じですし、単純な価格競争で終わってしまいますから、どのような角度からその製品をお客様に理解して頂くのかを、とても重要視しています。

金額との兼ね合いもありますから、1000円の物と10万円の物を、同じレベルで見る事はありませんが、その金額に対し価値があるかどうかのバランスは見ています。

もちろん自分自身の技術も同じで、知識と技術をお持ちのお客様であったり、使用条件と結果の影響が明確になっているような場合は、特に重要視していますし、それはプロと素人の境目は無く考えています。

自分自身の中では、もちろん内容としては良いと思いご提供をしていますが、その時の刃物の状態や性質、その他の条件なども含めた場合、自分でやり切れなかったと思う範囲もどうしても出てきますから、100%の自信を持っている訳でもありません。

必要な範囲には、それなりに明確な表現をし、皆さんに伝わるようにしていますが、それは決して大袈裟な事を述べている訳でもありませんし、現実的に可能な事しかお伝えはしていません。

しかし、それが絶対そうなるという100%保証があるわけではありませんから、条件次第で・・・と良く記載をしています。

そこに意味するのは、出来る可能性があったり、実際に出来る事があるのかという部分なので、そこに偽りは当然ありません。

技術の内容に関しては、自分の技術に対し、良く自問自答をします。

本当にこれでいいのか?

他の方法があるのではないか?

そう考え、色々なやり方を模索したり、使う道具を変えてみたりして、出来る限りで臨機応変に対応はしています。

それでもやりきれない事があるのは、致し方ない事ではあるのですが、そこを期待してご依頼を下さっている方もいらっしゃいますから、少しでも理想に近づけられるように、やれるだけの事はやらなければなりませんし、他の事例も含めて、もっと上手くいく方法の研究というのは、いつでも続けなければならないと考えています。

金額次第で解決できる事も結構ありますが、じゃあいくらならいけますか?と聞かれ、1割上がりますよ!程度のお話ではまず済みません。

むしろそれで行けるなら、そちらを最初からご提案している訳で・・・。

良く言われる特注は、高いとおっしゃる方もいらっしゃいますが、普段の流れと異なる内容で、それの為に特別に行う形となれば、当然同額では難しくなります。

 

2024年6月23日 (日)

バランスとは何かを考える。

私が考える刃物や砥石や研磨の融合は、全てにおいて良い物だけで構成をする事が、必ずしも良い結果になる訳では無いと考えます。

それぞれの範囲だけで見て良い物は、他と喧嘩をしてしまう事もありますので、あくまでもバランスです。

例えば、上級の刃物に対し、低級の砥石を使い、まともな研ぎを行わなければ、刃物は生きませんよね・・・。

もう一例出せば、刃物は低級で、砥石は最高レベルの品質を使い、研ぎは手間暇をかけても、刃物の限界は低いです・・・。

更に、刃物は中級で、砥石は最高でも、研ぎが酷ければ、何も生きて来ません・・・。

それぞれの良さを引き出すには、それぞれのバランスを合わせていく事が大切で、それが使いこなせる範囲にある事も大切です。

全て最高のもので揃えれば、それは良いまとまりになるかもしれませんが、それだと非常に高額になりますし、大変な苦労も増えますから、維持する事が難しくなります。

そう考えると、そこそこのもので揃えて、まとめていく事の方が、実は良いまとまりになる事もあります。

私がお客様に、商品をおすすめする際に、一番高い物をすすめない理由は何ですか?と良く聞かれる事があります。

それは、お客様が求める内容が、一番高い物ではないからです。

ご予算の事もそうですが、そこまで必要が無いのに、ただ高い物を買って、そこにそれだけの価値があったか?と考えると、無駄な買い物だったといつか思うかもしれません。

将来性を考えると、良い物という意味で、高い物を購入する事は、有意義な結果になるかもしれませんが、今現時点でそこに価値を見出せないのであれば、下の方にいくらでも選択肢がありますから、そこから選んだ方が、無駄は減ると思います。

逆に、お客様が内容を多く求めていると判断すれば、どうしても高い方面のものをおすすめする方向になる場合もあり、そんな高い物を・・・と言われてしまう事があります。

安く簡単に全てのものが盛り込まれたものを購入する事は出来ませんので、それは仕方がない事です。

多くを求めれば、どんな分野でも、自然に高い方面になってしまうのは同じ事です。

ご自身の思う所に合う製品を買うのか、予算から決めるか、その辺りはまず大きく分かれる選択肢です。

あとは、ご相談を頂いた中で、より良くなるものを少しズレてもおすすめする事はあると思います。

 

2024年6月22日 (土)

古物商のページに商品を追加しました

当方は古物商として、道具類と美術品の扱いを許されています。

以前より色々と委託販売を取り扱っていますが、2品の追加を致しました。

今回は2品とも刃物になります。

宜しければご購入なさってくださいね!

当店の古物商のページはこちらです。

2024年6月21日 (金)

新しい日本刀研磨のご紹介です!!!

以前より当方では、日本刀研磨を実用の為のものとして扱っています。

今までは・・・

・おまかせ研磨

・居合抜刀用面精度研磨(標準の磨き)

・居合抜刀用面精度研磨(斬れ味重視)

の3種でした。

おまかせ研磨は、当方の研磨としては、並扱いとなっており、一部のみ機械研磨を使用しますが、それ以外は手作業にて作業を行っており、拵の簡易修理(条件あり)も含み、混雑無しで1ヵ月以内としています。

居合抜刀用面精度研磨は、上位研磨として扱っており、拵の修理は別料金(必要と判断した場合はお見積りに含みます)ですが、独自の技術により面精度高めた特別な研ぎを行う事で、斬れ方が明確に出やすいものとして、一般向けの標準の磨き(順番待ち無しで1ヵ月程度)と、斬り損じをしないレベルの上級者向け専用としての斬れ味重視(順番待ち無しで1ヵ月半程度)の2パターンがあります。

納期短縮と価格を抑える為に導入をしたおまかせ研磨も、ご注文が重なると、数か月頂く状態になる事が増えていましたので、結局はお待たせする時間がありました。

一般刃物と同じような納期・・・と当初はお話をしていましたが、機械加工をかなり減らした関係で、技術的には良くなっていましたが、作業時間がかかり、余裕をもって1ヵ月以内に終わらせる事も難しいのが現状です。

そこで、納期と価格を重視し、とにかく早く安く!で出来ないか?とおっしゃる方もいらっしゃいますので、今回新しい研磨を導入致しました。

新しい研磨は

・実用お急ぎ研磨(仮)

です!!!

こちらは機械加工をメインとし、手研磨との組み合わせで必要最低限度の研磨を行い、拵の修理は最低限度の範囲までとなりますが、セットに含まれます。

刃付けに関しましては手研ぎで行います。

納期は一般刃物と同じ扱いの範囲になりますので、混雑具合により変わりますが、おまかせ研磨の流れや、居合抜刀用面精度研磨の流れとは異なりますので、早ければ1週間以内という場合もあるかもしれません。

この研磨を行ってしまうと、これより上のレベルの研磨にはもう戻せないのでは?、と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、お急ぎ実用研磨から、いずれ居合抜刀用面精度研磨のレベルへも戻せるような内容構成であり、明らかな手抜きで酷い加工とは異ではありません。

機械作業で低価格だから適当という訳ではなく、他刃物類の加工で培った機械加工技術を使っていますので、酷い結果になるようなものではありませんから、安心してご利用ください。

実用研磨として多くを望まない方で、特に納期と価格を抑えたい方は、これ以上の研磨は無いでしょう。

それよりも良い研磨をと思う方は、おまかせ研磨をご選択ください。

更に当方の基準となる良い研磨をと思う方は、居合抜刀用面精度研磨(通常の磨き)をご選択ください。

それでもまだご満足されない場合、切り損じをしない腕をお持ちの上級者の方専用として、居合抜刀用面精度研磨(斬れ味重視)をご用意しております。

そこまでやっても不足であると感じる方は、まずいらっしゃらないと思いますが、万が一の場合には、日本刀の性能や体配から見直す必要も出て来るでしょう。

今後は

・お急ぎ実用研磨

・おまかせ研磨

・居合抜刀用面精度研磨(標準の磨き)

・居合抜刀用面精度研磨(斬れ味重視)

の4種を基本とした構成をご用意してお待ちしております。

詳しくは、HPに情報をUPしてありますので、そちらでご確認ください。

 

2024年6月20日 (木)

感謝をお伝え頂き、ありがとうございます。

当方に技術作業のご依頼を頂き、お客様より感謝をお伝え頂けるケースが多くあります。

私としましては、あくまでも自分が良いと思う事や、お客様のご要望とのバランスを見て内容をご提案し、それを承諾頂いてのご依頼ですから、当たり前の事をしたまでと思っています。

しかし、そういったお声が多く頂ける事で、細かく必要な内容のご説明をしている事や、可能性や将来性なども含めたお話をする事なども、余計なお世話と思いつつも、喜んで頂けたのだと思うと、本当にありがたく思っております。

先日も、数件続けてお礼のお言葉を頂き、真面目に対応をして良かったと思っていますし、むしろ恐縮するところでもあります。

色々な所に問い合わせをされたり、実際にご利用いただいた経験のある方からは、対応範囲が細かい事や、内容の選択幅、説明の細かさなどに対し、評価を頂く事は非常に多いです。

特に説明に関しては、今までに何度も書いている事ですが、その刃物の本当の意味での状態を知る事で、それがどう良くなるのかも理解出来ますし、大きく改善が実際に出来れば、そこでいくつもの知識を得て、更に使用してその事を感じ取れれば、多くのものが吸収できると思います。

私自身が学んできた事は、ただ良いとされる事だけを、ひたすら練習する事ではなく、ダメだと言われている事もあえてやってみたり、一般的には行われない方法でのやり方をやってみたり、色々な研究をしてきての今の技術です。

ですから、なぜそういう状態になっているのかや、元々の製造段階での不備がどこにあるのかは、直ぐに分かります。

目視だけではなく、確実性の為に、オリジナルゲージを使っての確認もする事はありますが、砥石に当ててみる事が、私の中では一番の計測方法で、それが信用に値する研ぎとなっている証拠でもあります。

大きく長い物になれば、特にその歪や凹凸の問題は、とてつもなく厄介で面倒な部分になりますが、それを克服し、正しく使用したり、研げる状態を作り出せば、その先は楽になります。

お客様ご自身が、刃物を良い状態から使用をしたり、研いだりする事で、そこに一つの基準を知る事が出来ます。

普段ご使用中の刃物の状態が悪いと、基準が明確に出ていないので、どこで何を合わせて研げば良いのか、分からない状態のままでなんとなく研ぐ形になりますが、そこから脱する意味でも、大きく改善に繋がります。

良い砥石を使用し、正しいと言える範囲の面修正をしても、上手く研げないとおっしゃる方が多いのは、そこに原因があります。

今ある刃物の研ぎが正しく出来る状態ではないのに、そこに基準を作って直していく事は、決して簡単な事ではありませんから、何とななるだろうと思い研ぎ続け、取り返しのつかない状態になっていく事が多いです。

まず、基準を正しく作り、それに準じて研ぎを行い、自分が上手く研げない理由をそこから探して行けば、必ず今よりは格段に上手くなっていきます。

私が研磨したり研いでお渡しをする刃物の多くは、意図した内容のものが含まれた状態でお返しをしています。

それが難しく厄介に感じてしまう方もいらっしゃるかもしれませんし、大きく参考になる方もいらっしゃるかもしれません。

やり方は色々とありますが、いわゆる基準的な部分からは、大きくずらすような事はなく、その中での違いを明確に出せるよう、構成を考えて作業をしていますので、実際にご利用を頂きまして、そこから何かを感じ取って頂ければと思います。

製品が別物になるような感覚や、価値が大きく上がったと、嬉しい表現をしてくださる方も結構いらっしゃいますので、私が行っている実用に特化した研磨や研ぎを、是非ご堪能ください。

 

2024年6月19日 (水)

日本刀が美術で求められる事

日本刀は美術品としての流通が多く、現状では美術品扱いになっています。

実用品として使われる多くは、美術品としての価値が低い物や、低価格帯のものが多く使われます。

現在でも、刀工により日本刀は作刀されており、注文打ちをしての製作もありますが、過去程の流通量は無いので、市場にはあまり増えていないようです。

美術品としての価値としては、古い時代の有名で人気のある刀工の作品が多く、その中でも特に出来が良いとされるものは、凄い価値を持っていて、簡単に入手する事は困難です。

また、出来だけではなく、状態の問題もあります。

古い時代のものは、保管管理の状態が良いものの方が、当然価値は上がります。

そして、鑑定書がしっかりとついた物をというのも一つの判断基準で、それがあるだけでも価値は更に高まるとされています。

細かいお話をすると、相当長くなってしまうので、簡単にだけご説明をさせて頂きました。

古いものでも現代のものでも、気に入った物を手にする事が、一番良いと思いますので、金額や名前だけではなく、実物をみて欲しいと思えるものを購入してください。

美術刀の購入は、実用刀よりかなり値段は高くなると思いますが、最低限度の保管管理さえすれば、長くその価値を維持できるものです。

そして、登録証と所有者変更のみで、誰でも所有保管が可能なもので、将来は売却をしたり、人に譲ったりもできますので、多くの皆さんが思っているよりも、ハードルは高くはありません。

現状一振りですが、美術刀で個人売買の取り扱い品が一振りだけあります。

ご興味がある方は、お声がけください。

この手の日本刀は多くが海外に出てしまい、国内にはほとんど残っていないそうなので、将来的な価値も考えると、非常にお得とも言えるかもしれません。

一度海外に出た日本刀は、日本に戻れる事はまずないですし、今のうちにおさえておく事をおすすめ致します。

 

2024年6月18日 (火)

絶対にという意気込みと根性

製品を製造するメーカーは、商品化する為に、色々な努力をされています。

製品が必ず良い完成になるとは限らないのですが、それは当たり前に起こる事だと思うので、致し方ないと思います。

ただ、その後の事が問題です。

良くないと分かっていながら流通をさせるメーカーと、良くない物は絶対に流通させないというメーカーがあり、その差が大きく開いています。

刃物や砥石の分野は、特にそういったものの情報が色々と入ってきますが、多くの場合は見て見ぬふりです。

しかし、一部のメーカーに関しては、わずかな傷ですら流通をさせないという、徹底した管理をされています。

それは、高級だとか、安いとか、そういう問題とは関係なく、その製品をどう見て貰いたいのかや、どう扱っているのかを示していると言えます。

確実を目指し、悪い意見があった事に対し、真摯に向き合ってきたメーカーは、絶対的な地位を得ており、それに関しては尊敬の念を持っています。

そこにあるのは、製造に関わる人達の考え方や技術力と、製品を検品や管理する方の対応がしっかりしているという事で、信用に値すると言えるでしょう。

良い物とは何か?!を、深く考えさせられるお話を耳にし、本当にその通りだと感じています。

特にプロ向けの考えとしては、色々な理由から、上級方面をどうしても欲しますので、その時に良し悪しがどうであろうと、その一つを手にした事で判断をする訳ですから、たまたまの一つがマイナスに働くと思えば、如何に一つの製品が大切なのか、良く考えなければならないでしょう。

質が落ちたと言われたら、それは多大なマイナスになりますから、わずかな?のうちに、早急に改善する事が必要だと思います。

求められるものが何なのか、今一度考えながら、そういったレベルに近づけるよう、研究を続けて行きます。

 

 

2024年6月17日 (月)

修理に出すか、買い替えるか・・・

以前に調子が悪くなった仕事のメインで使うプリンターが、また調子が悪いです。

インク詰まりとかそういう単純な状態ではなく、機械的な問題のようですが、症状が出る時と出ない時があり、悩まされていました。

修理に出すと、最低の固定価格があり、それがまずかなり高いのと、それだけで直らない場合の金額を考えれば、新品が普通に買えてしまいます。

しかも、色々な部位の劣化も必ずありますので、買い直した方が良いレベルです。

そんな事を何度も繰り返し、もうこれ以上は難しいと感じたので、買い直す事にしました。

いつも同じモデルの系統にしているのですが、これの寿命がかなり短く、3年程度です。

インクジェットとしてはかなり高速で、文章に対して特に強いタイプですが、荷物の伝票印刷にも使っています。

用紙のトレーが2種ついており、別の用紙を多く入れておけるのも特徴で助かっています。

そこまで毎日凄い量の印刷をしている訳でもないので、もっと長く使えればと思いますが、モデルを変えて使い勝手が変わるのも、仕事では結構面倒な部分ではあります。

今はインクのタンクを交換するのではなく、インクを直接プリンターのインク入れに注入するタイプも出ていて、それはインクコストがかなり下がるようなので、凄く良さそうなのですが、タンクごと交換ではない事のマイナス面もあると考えていますので、今はまだ様子見です。

 

2024年6月16日 (日)

意外と使い物になります。

昔から、裁ち鋏(裁縫用の鋏)は紙を切る為に使ってはいけないと、良く耳にした方も多いでしょう。

布を切る場合と、紙を切る場合では、研ぎの設定が異なりますので、確かに相性の問題はありますし、紙を切る方が早く刃は消耗しますから、使わない方が良いと言われている意味は理解できます。

では、紙専用に設定をした研ぎで、裁ち鋏を使うのはどうでしょうか?

実はこれ、色々な業界で使われている方法で、しっかりと確実に切れる鋏である事から、どうも使われているようです。

布専用に製造された鋏なのに・・・と思う方もいらっしゃると思いますが、逆に紙専用の鋏という設定は昔には無く、他には枝や木、髪の毛などの分類に分かれていたそうなので、どれが一番近いかと言えば、裁ち鋏がそれにあたるのでしょう。

遥か昔の情報は持ち合わせていませんので、厳密な事は分かりませんが、業界によっては、昔から裁ち鋏で紙を切っていたそうなので、布専用と言われる裁ち鋏の扱いは、むしろ現代になってからのお話なのかもしれません。

なお、同形状のものでも、刃の種類によっては、ゴムや厚紙を切るものなどもあり、ぱっと見ただけではその差は分からない物もあります。

実際に刃はどうなのか?と見ると、残念な事に、刃付けも同じ状態なので、それで専用品と表現をするのは、適切ではないと思っています。

曖昧な状況で専用品とする刃物は、意外と多く存在していますが、それらは設定をしっかりと変えてあげる事で、性能特化させる事が出来ますし、今までの使い勝手が嘘のように、気持ち良く使う事が出来ます。

私が過去に購入し、刃の性質は特別良くは無かったのですが、一応使えそうな鋏がありました。

それは、現代風裁ち鋏で、高級品ではなく量産品ですが、歪取りと反り捻りの調整をしつつ、裏鋤(刃の裏に凹みを作る事)を作り、表の段刃を取ってから調整研ぎを行ったら、紙がスイスイと気持ち良く切れるようになりました。

元々の購入の理由が、紙用の大きめな鋏としての扱いでしたから、丁度用途には適合しましたが、当初の状態は刃と言えるものはほぼ無く、かみ合わせも酷い状態でした。

そこから色々な直しや調整を行い、まともな刃付けをした事で、繊細で綺麗に切れる鋏へと変化したのです。

この鋏は硬いものは一切切りませんので、本当に薄い紙を1~2枚、必要に応じて形に切る程度ですが、数年に一度研ぐ程度で、まともに使えている状態です。

材質はステンレス系ですが、刃の為に定期的に油を塗り、綺麗に拭きとっておく程度で、本当に良く活躍してくれています。

布や紙に使うからという事で、油を一切ささない方がいらっしゃいますが、それは絶対にダメです。

油をベタベタにしておく必要はありませんが、擦れる構造の為、最低限度の摩擦軽減は必要となりますし、特に鋏を使う際に速度を上げて使う方は要注意です。

オイルスプレーなどを軽くかけるか、ティッシュに吹き付けた物を刃や擦れる位置に塗り、新しいティッシュで出来る限り拭き取っておくだけで、刃の寿命はかなり変わります。

刃の擦りがギシギシとする感じになる方は、鋏の設定や研ぎが悪い場合と、単純に油切れの場合があります。

ビビリのような振動が出ている状態だと、刃はお互いにダメージを与えますから、布や紙に油が移るような状態にはならない程度として、塗って拭き取り、最低限度だけで良いので、油は塗るようにしてください。

 

2024年6月15日 (土)

ようやく終わりが見えて来ました。

長い事作業をしていたものが、ようやく最終段階に入り、わずかで終わりです。

大きなやり直しを1回と、軽いやり直しを2回で、やっと刃物が落ち着いてくれました。

こういう事はたまにありますが、自分が思っているよりも、今までの事例は増えています。

これは私の基準が厳しくなった事も理由ですが、状況の改善にはそれくらいの可能性も考え、段取りを組んで行かないといけないという事でもあると思います。

内容的には、かなり難しい設定を多く含む作業なので、致し方ないと思う反面、技術的な苦労やコストも考えると、内容を変更しないと難しいと思う部分も出てきてしまっています。

刃物分野に完全なものは無いとしても、基準に届かない状態では、私が作業する意味についての疑問も出てきますし、どうでも良い訳では無く、結果を求めてご利用を頂いているケースが多いので、それに準じた内容の維持は、最優先にしていかなければというのがあります。

そこまでではない方には、他に選択肢もご用意していますし、最上を望んでいないのであれば、納期や金額も抑えられますから、その差がどうしても出てしまう事は仕方がない事なのでしょう。

ご利用のハードルは上がりますが、そもそものハードルは高い部分があると思いますので、今更だとおっしゃって頂ける部分はあると思っています。

 

2024年6月14日 (金)

厳しいようですが・・・

たった一つの事や、ひとくくりの事すら出来ないのであれば、プロとしては使い物になりませんし、向いていないと思います。

何年やっても、急にそこから伸びる事はありませんので、ある程度の年数で見切りを付け、諦めた方が良いでしょう。

職人や一流のプロと呼ばれる人が、ずっと出来ない人生で来て、何十年後に急に良い腕になる事などあり得ません。

そんな話を、一流のプロの方と、先日お話していました。

分野ごとに必要な事は違いますが、出来ない事を言い訳には出来ないのは同じだと思いますし、狭い範囲の事であればなおの事です。

それがいつ出来るようになるのかで、人生は決まってしまいます。

いつもお話をするように、技術は才能社会ですから、才能が無いと難しいです。

それっぽい形にするだけでは、それをプロの仕事と呼ぶ事は出来ませんし、そこに価値を見出してくださる方は少ないと言われています。

そして、ただの作業員で終わるか、職人になるかは、本人や周りの人の環境です。

多くの人が関わる仕事で、一人でも劣っている人がいたら、その仕事は悪い結末を迎えます。

管理出来ない上司や社長の元では、自分の成長はありませんし、その人達を基準に仕事をする以上は、それを超える事も出来ません。

そもそも越えられる能力があったら、多分そこにはいないはずです。

 

2024年6月13日 (木)

研ぎの確実性は簡単にあげられます。

研ぎで成功率が低い方の特徴としては、砥石の面直しが確実に出来ていない事が多いです。

ブロック塀のブロックに金剛砂を合わせて擦りつけて・・・や、大きなグラインダー砥石のようなものに金剛砂を撒いて・・・は、過去から良く行われている方が多いのですが、この辺りは精度とは無縁の修正になります。

私も色々と過去に苦労をしながら、なんとか砥石の修正をもっと良くしたいと思い、様々な方法をやってきた側ですから、それは現代における面直しとしては、精度のせの字にも被らないようなレベルでしかありません。

そんなはずはない!型で作られてるんだぞ!とおっしゃる方も、過去の複数いらっしゃいますが、それらの製品の初期の面精度のレベルもそうですし、そのブロックや砥石の面の管理は、どのように行うのでしょうか?

私が問題視しているのはそこです。

大きく精度がズレる可能性があるものに対し、直しが出来ない修正方法は、例え初期にどんなに精度が高くても、直ぐに精度落ちしてしまいますから、その面を信用する事は出来ません。

修正専用の砥石というものも販売されていますが、これらブロックや砥石と同じ部類の考えになります。

また、上級者は除外しますが、砥石を複数擦り合わせて行いそのまま研ぐ場合や、同じように複数擦り合わせたものを修正用砥石のように使う方法等の場合、その面が確実に直ったとの見込み違いも多くありますし、片側のズレが大きいものを擦り合わせた際に、どうしても全く同じ面の構成にする事は難しいというのもあります。

修正用の砥石は、荒く密度が低い荒砥物で直そうとすれば、早く終わるのは確かにあるのですが、その砥石の面も早く崩れますし、ほとんどの修正用砥石と言われるものは、硬すぎて修正力が上がらず、結局はいつまで経っても直らないというのもあります。

それらをクリアし、楽に精度良く修正が可能なのは、シャプトンの砥石修正器です。

シャプトン社は、良質な砥石の製造を熱心に行って来ただけではなく、砥石の修正も早い段階から重要視して製品化するなど、砥石だけをただ売るのではなく、正しく修正された砥石で、正しく確実に研いで貰おうという考えがあるメーカーです。

過去から販売が続くロングセラーの「なおる」は、砥粒を撒いて、水と合わせて砥石を修正する板で、直りの早さと目立ても同時に出来るので、特に荒砥~中砥(中仕上げ手前まで)に効果が高いです。

仕上げ砥石類には別売りで粒子がかなり揃った細目パウダーを使えば、表面を光沢のある面一に仕上げられます。

たまに面の確認をし、精度がズレて来たと思ったら、メーカーに送って直しをお願いする事も可能ですし、ご自身で精度の高い版をお持ちの方は、そこに荒めの耐水ペーパーを貼り付け、丁寧に擦ってあげれば、また精度は戻す事が可能です。

ダイヤモンド砥石で面管理が確実に出来る方は、精度を良くしたダイヤモンド砥石で、水をかけながら擦り続ければ、それだけで面を直す事も可能です。

まだこれでも管理が・・・とおっしゃる方には、電着ダイヤを高精度に作った「空母」がおすすめです。

こちらは元々、鉋や切出小刀や鑿など、平面研ぎに対しての販売として、片面は刃物の修正、片面は砥石の修正にと、両面の構成で作られており、平面に直った刃物と平面に直った砥石の融合で、精度の高い研ぎを実現する形です。

必要なのは水だけで、シャプトンの砥石との相性良く作られています。

私は両面とも、砥石の修正に使ってしまっていますが、刃の黒幕など、シャプトン製の砥石サイズに丁度合うので、重厚感のある砥石台としても非常に有効です。

寿命は相当長いので、たまに研いで面修正を行う程度であれば、5年以上確実に持ちます。

毎日のように研ぎで使う方でも、一日中ずっと砥石の修正をしているような方でなければ、3年くらいはもつでしょう。

寿命を迎えた電着面は、再電着を依頼する事も可能なので、初期投資は高めですが、その後のコストはかなり抑えられます。

そして、過去に販売された硝子砥石専用の修正器として販売されたのが「硝子修正器」です。

こちらは片面の設定ですが、高精度な硝子面を有効に使い、電着ダイヤ修正器としていて、これらの中では精度が一番高いです。

空母の砥石修正面と比べ、寿命はさほど変わらない程度と思いますが、空母は重量があるので砥石の上で動かしての修正は向きませんが、こちらのガラス修正器は軽量なので、必要に応じて砥石の上で動かす事も可能です。

こちらは再電着は出来ませんが、購入後は水のみ必要と考えると、かなり楽で価格も抑えられて、おすすめしやすいです。

色々と使い方に相性もありますので、ご相談を頂ければと思います。

いずれも必要な修正器として、当方ではずっと販売をしてきていますが、それ以前のユーザー時代からも、信用のある修正器として使ってきていますので、間違いない製品と言えますし、現在も私の仕事の中で、精度の高い作業に合わせ使っていますので、その辺りも信用頂ける材料かと思います。

砥石の面修正専用品の、「硝子修正器」と「空母」と「なおる」の販売はこちらで行っています。

2024年6月12日 (水)

分かっていても認めたくないのでしょう・・・

日本刀研磨の多くは、現代では色々な加工方法が行われており、機械加工や薬品も使われています。

一流とされる研師の仕事では、それらは無いだろうと言われていますが、安い研磨関連だと両方使われているのは当たり前とも言われています。

そうでなければ、わずか数万で最上級作業や上級作業とほぼ同じ事をやっていたら、コストがどう考えても合いません。

売れない研師は、品評会で名誉ある賞を取らない限り、知名度は上がりませんし、高い仕事の依頼は来ませんから、生活の為に安い研磨を受けていますが、それを勉強だからといって、何も使わずに手作業だけでやっているとしたら、いくらなんでも安すぎます。

ただ、こういったお話に関しては、研磨をする側は理解していたとしても、利用するお客様側は認めたくない部分があり、日本刀研磨は伝統的な技術だから機械など使うはずがない!とおっしゃる方も中にはいらっしゃるようです。

そうはいっても、刀工が行う鍛冶押しでも、機械加工は行われている場合がありますが、それを隠さずに行っている方も多くいらっしゃいます。

日本刀研磨においての機械加工は、下地作りに良く使われ、場合によっては仕上げの途中まで行われる事もあり、刃文や地を多く出す為には、下地や仕上げ研ぎが終わった後、薬品を使っている例も多いです。

その先で上手く仕上げを行うと、薬品を使った事は分からないと言われていますが、あまりにも凹凸がはっきり出過ぎていたりすれば、薬品を使っている可能性は高いと思います。

日本刀を見て使う範囲だけだと、分からない事も多いかもしれませんが、私は研ぐ事が仕事で、刃物の状況を直接見ていますので、匂いも感じ取っていますから、薬品の存在を確認できます。

中和すればある程度は分からなくなるのだと思いますが、それでも残る部分があり、その上から仕上げの加工を行っても、研いだ時に匂いが出てきますので、それは明確に分かります。

しかし、これらを悪く言っているのではなく、昔は出来なかった事が今出来ると思えば、それも良しと考えていますので、最高レベルの美術品や、それに近いレベルのものに対する作業以外は、それで良いと思っています。

結局仕上がりだけを見る人が多く、その刃物がどういう加工をされ、何を意図しているのかは分からないので、最終的な見た目だけの判断をし、綺麗だから大丈夫と思うのです。

それは他分野の刃物でも、仕上げだけで判断する方が多いので、同じ事だと思います。

何もかもを疑っていては、良い物も悪く見えてしまう事はありますが、加工を正しく知って利用するのであれば、それはむしろ良い事だと思っています。

当方では、過去に何度か記載をしましたが、おまかせ研磨に関しては、大きく加工が必要な場合は、機械加工を加えています。

(※薬品については、意図したものとしてお客様に求められない限り、当方では使用する事はありません。)

現在は、機械加工の幅を減らし、手作業率が上がっていますので、欠けや大きな形のズレの修正範囲のみに限られますが、使用をする事はあります。

その後、手研ぎに入って、磨きと刃付けを行い、それと並行して拵の修理も行っていますが、価格を抑える為には必要な部分であり、上級の研磨との差を付けています。

更に上級の研磨だと、精度を上げる為の特別な研磨も行っていますので、色々な部分で良さを引き出す作業が含まれているので、それ以上に差があるとも言えます。

機械加工を適当に行えば、かえって悪い状況になる可能性は高いので、もちろん上手い下手は出てきますが、私は機械での加工を他の刃物類でも多く行っていますし、それをベースにした手研ぎでの高精度研磨を確立していますので、頑張っても手作業で必要な精度が出せない方よりは、明らかに私の機械加工の方がレベルは高いはずです。

当方の日本刀研磨は、美術品に対して行う研磨ではなく、実用品に対して行う研磨ですから、それが問題になる事もありませんし、必要性能をより引き出しやすくなるのであれば、むしろ歓迎される方が多いと考えています。

他刃物類でもそうですが、手作業を売りにしていても、それ相応の結果が出る研ぎばかりではありませんから、機械加工も加えつつ、手研ぎの良さをプラス出来れば、それは良い事だと考えます。

そもそも、機械加工が一切行えない状況で、難しい直しは行う事が困難ですから、総合的な技術として幅広く見れば、機械加工も必要不可欠と言えるでしょう。

現在のおまかせ研磨でも、内容を考えるとかなりお得だと思いますが、まだ安く出来る方法はないか?とのお話は稀にあります。

これ以上落とすと、当方での加工技術を明確に発揮できなくなる部分があり、折角のご利用であればと思う所はありますが、現代における価格の上昇を考えると、誰もが安くある事で助かるのは十分に理解出来ます。

そこまで落とすとなれば、「使い物になる」というのが必要な要素になるので、それ以下にならないようにしなければなりません。

その辺りに対応できる形で、どこまで抑えられるかは分かりませんが、新しい研磨サービスを検討していますので、完成までお待ちください。

機械加工率が高いものにはなると想定しますので、研磨自体の価値が上がる事はまず無いと思いますが、実用性能を極端に落とすような事無く、低価格で短期納期の加工をご用意し、実用としてのご理解のある方に、色々な負担なくご利用を頂ける形を作れればと思っています。

あくまでも実用として、使えない研磨でお代を頂くつもりはありませんので、その辺りは十分に結果を残して出来るかどうかが、重要な部分だと考えています。

もし低価格で短期納期の研磨が完成した場合、現状のおまかせ研磨に関しては、グレードアップをするか、廃止になる可能性もあります。

その辺りは、実際に当店の研磨をご利用頂いているお客様から、ご意見を頂戴出来ればと思います。

今後も色々な企画をし、このように幅広く対応をと思っていますので、研磨の際には是非当店のご利用をご検討して頂ければ幸いです。

様々な状況説明や、必要項目の内容をお話し、お見積りを作成していますので、実際にご利用を頂ければ、現状を知り回復が可能な範囲が多くあると思います。

 

2024年6月11日 (火)

上手く作業をしては駄目です

技術は学ぶ事が大変で、レベルが少し上がるだけでも、かなり苦労をする事ですが、更に身に付ける事はもっと大変になります。

技術の作業を学ぶ事は、こうすればいい、こういう場合はこうやればいいと、人から教わった事をただ覚えても、それをただやっただけにしかなりません。

私が良くお話をしているのは、上手くやるのではなく、自然にそちらの方向へ向かう技術の大切さです。

上手くやる事を考えると、やらされているような形だけの技術になり、その中の意味合いなどが消えてしまいます。

必要な要素である意味合いが消えた技術は、そこから得られる良さは格段に落ち、取り繕った形だけのもので、それは技術とは呼べないと思います。

良く言われる「味」とは、そういうものでは無いと考えています。

ですから、自然にそうならない構成で出来ている技術は、そもそもそれ自体に価値があるのか?という疑問すら感じる事もあります。

毎回、条件が異なる中での技術は、どう構成をしていくのかで、最終結果が大きく変わります。

それは経験によるものであったり、それ以外に方法が無い場合もありますが、多くの場合には、やり方は初期段階で複数の枝分かれがあり、最終的な状況の想定に合わせ、十分な選択肢はあります。

そんな中でただまとめあげて完成させるのではなく、それぞれの選択が必要であったとしても、それをただこなすのではなく、必要な物事をしっかりと含めながらやっていくと、自然に必要な形が決まっていくものです。

これ以外に方法が無いという場合でも、こうすればいいんでしょ!とただ加工をしたものには、凄さを感じないものです。

なんというか、冷たい感じが出ている刃物は、私は好きではないですし、それに手を伸ばして使おうとは思えません。

ただ意気込んで作られたとか、そういう事ではなく、その辺りは考えやその先を見込んだ事が含まれているかなので、そこまで見えるようになって、ようやくプロの領域に入るのだと私は考えます。

私が日頃、手をかけてやる部分がありますが、それは基礎の構成の部分です。

その時点で、仕上げでは誤魔化せない重要な部分が決まります。

技術における重要な要素を理解せず、ただ加工をしたものは、性能を発揮出来ませんから、一番重要なのはそこだと考えています。

私が良くお話をしている、仕上げで誤魔化すとは、そういう部分が欠けているに関わらず、それっぽく見せた状態を指します。

この辺りをご理解頂いている方は、新品の刃物を購入し、こうじゃないんだけど・・・と悩まれ、当方に加工の依頼をされるケースが多いです。

構成が難しい形状の想定をご希望になる方も稀にいらっしゃいますが、それが無理であればお受け出来ません。

可能であってもマイナスが多くあれば、やめた方が良いとお話をします。

丁度良い所は、刃物の使い手側にいないと、良し悪しが分かるモノではないので、それを理解しているからこその技術はありますので、ご相談頂ければと思います。

内容が細かくなれば、特注扱いになり、金額と納期が増えますが、ご満足頂ける刃物へと、変化させる事が出来ると思います。

 

2024年6月10日 (月)

必要なモノを厳選して揃えましょう!

刃物や砥石は、数多く手に入れて管理をすると、かなりの高額になります。

私自身も勉強や研究の為に、素人時代に使った金額は、まあまあな金額がする車で言うと何台分に相当するか分からないくらいです。

それだけの苦労をして、今の知識と技術を得ました。

どこかに就職をすれば、勉強や研究の資金が無くても、仕事の中で教えて貰えて、学ぶ材料も与えて貰え、それで学べるかもしれませんが、自分で懐を痛めて学ぶ事をしないので、どうしてもお客様が購入や利用して下さる事の重みを、なかなか理解できないと思います。

私が良くお話をする、「刃物や砥石の使用者側」とお話をしているのは、ほとんどの範囲に関しては、お金を全て自分で捻出し、それを使って来たからこそ言える事で、単純にその金額が高い安いだけで見ていない部分があります。

どんなに良い製品であったとしても、他に1万円で売っているものがあれば、10万円のモノを購入する場合、もちろん躊躇します。

違いがどうあるのか、何が売りになっているのか、それを購入する事の意味があるのか、3万円のあの商品ではダメなのか、と。

そういった感じで、誰よりもその重さは理解しています。

自分がこうして何かを提供する側になり、利益も上げなければならいので、金額は抑えたいと思う部分がありますが、他より何倍も時間とお金を使う技術に関しては、止む無くそういった金額にするしか無いのです。

話を戻しますが、私がおすすめする技術や商品は、必要範囲の物として考えると、購入して良かった!損をしなくて済んだ!と思えるような、おすすめの商品をメインとしています。

だからこそ、商品を簡単に増やさないのです。

自分が購入して、これは使い物にならなかった・・・と思えば、それが売れ筋だったとしても、販売品には含められませんし、安心して販売出来ないと判断をすれば、取り扱い項目から減らします。

私は仕事に関しては、私情による判断はせず、かなり厳しい目で見ています。

実際には表に出すよりも、それ以上の厳しい目を持っていますので、こだわりが強いお客様に対しては、素直に細かい範囲も含めた利点と難点をお伝えさせて頂き、ご納得頂ければという形で、ご提供をしています。

それでご利用が無ければ、残念だと思う気持ちはもちろんありますが、それでも良し悪しを知らずに購入してしまい、後で後悔を与えてしまうような事になるのは、どうしても避けたいという思いがあります。

どこで購入しても同じ商品だったとしても、意味のある購入をして頂きたいという思いがありますので、ご質問には極力お答えしています。

技術のご利用や、ご購入の際には、とにかく色々と購入をしてみるのも、良い勉強にはなると思いますが、予算が限られる話ですから、必要範囲をまず定め、それらをまとめてか順に購入し、環境を整えてしまった方が、無駄な出費は絶対に無いと言えます。

中途半端に色々な物に手を出してみて、これじゃない!あれじゃない!とやっているうちに、これが揃っていれば・・・の物は、とっくに何回分も購入出来た金額を超えている事でしょう。

それが冒険で面白いと思う方であれば、楽しみの一つとしてアリだと思いますが、予算を無駄にする事無く、良い環境にしたいと思うのであれば、それぞれをまとめて考えて購入し、不足分を追加する考えで良いと思います。

そうする事で、初期投資は高くなっても、大きな無駄は相当省けますし、余計なストレスにもなりません。

現代では、どうしても気に入らなかったら、オークションや売買サイトで売ってしまうという手もありますが、使った金額をきっちり回収できる訳ではありませんし、余計な手間もかかりますから、無駄を減らすという意味では、良い購入方法の一つでは無いかと思います。

購入や技術の利用には、色々とポイントがありますので、それらを知っていくと、良い組み合わせが見つかると思います。

 

2024年6月 9日 (日)

見抜く力

刃物の状態を見て、何が原因でこうなったのか、ほとんどの事は分かります。

色々な目線で見て判断する部分と、自分の正しい研ぎで砥石に当ててみれば、なおの事で一目瞭然です。

新品でも使用中のものでも、状況が良くならない原因は基準にあります。

その基準がどこにあり、何を考えて作られたのかを読めるようになると、結論が見えてきます。

私の技術は、基本に忠実な部分と、改良を加えて別物にした部分がありますが、必要精度の範囲は除外していませんので、明らかなズレは研ぎで直ぐに出ます。

本来当たらないはずの場所に研ぎが当たったり、当たるはずの場所に当たらなかったり、研ぐ量で調整をしてもしきれないものは、基本構成に問題がある事は確実と言えます。

ですから、作業をする人の技量や安定は、そこで表面化するとも言えるでしょう。

完全ではないにしても、仕上げ砥石をほんの少しだけでも当てて確認をしていれば、そういう事にはならずに済むはずなのですが、とりあえずやっておいた!のような作業物が多いのは、本当に残念です。

業種によっては、一流の腕を持ち合わせるまで、仕事は手伝い程度までしか出来ず、重要な仕事はやらせないという物事もありますが、練習させないと結果が出せないからと、無理に出来ない人にやらせて、それを製品化している例があり、その手の状況があると、明らかに製品の質が落ちますから、直ぐにそれは分かります。

もし同じ人がやっているなら、機械の整備や部材の管理が悪かったり、作業に慣れた事で、大丈夫だと錯覚をし、手抜き状態になっている可能性もあるでしょう。

ある程度のバラツキは、どうしても出てしまいますが、明らかに違いが出るとすれば、そういった部分だと思います。

必要な性能を決めるのは、基本の部分ですから、その基本を生かす為には、基準を最低限度は守る必要があります。

 

2024年6月 8日 (土)

性能を感じてください

当方の刃物研磨は、実用で刃物を使う事を十分に理解していますので、そこから必要な要素をしっかりと生かしつつ、研磨を行っています。

ただ作業が出来るという事ではないので、その差は大きいとお客様におっしゃって頂けています。

色々な研磨を今まで開発してきて、全体的に見て、十分な領域にはあると思います。

条件によって、結果は異なりますので、絶対とは言い切れませんが、刃物が持つ性能を実用とどう絡めて行くのかは、当方の得意としている範囲です。

研磨や研ぎは、少し何かが出来た程度では、熟知したとは言えません。

様々な刃物が持つ、それぞれの性質や原理と理論を知り、それを刃物に生かした作業が出来てこそ、成り立つモノだと思っています。

見た目がそっくりでも、中身は大きく違う事もありますので、良くお伝えをしているのは、見た目に騙されない事という所です。

実際に使ってみて、何かが違うという所から入り、ある程度の知識や技術を得て来ると、これが多分おかしいという形まで見えてきます。

その辺りまで来れば、見た目での違いの判別も出来るようになるでしょう。

細かい歪がどうとか、そういう部分ではなく、もっとはっきり見えるものが沢山ありますので、まずはそこから見て感じて判断が出来るようになりましょう。

難しい加工の場合、精度維持は相当困難になりますので、私は実用で必要な部分を残す事を優先しています。

あくまでも「実用」を大切にした研磨や研ぎですが、使って頂ければ良さが分かると思います。

 

2024年6月 7日 (金)

実用刀というジャンル

日本刀の真剣は、現代においては美術品扱いで製作されています。

しかし、居合、抜刀、試斬、に使用するものに関しては、実用品扱いです。

その実用品としての日本刀は、美術品とは求められるものが異なるので、それに合わせた研磨や拵の設定が必要になります。

日本刀は、過去に構成を考えられた形が今も残っており、その製造の材料は玉鋼と決まっており、工程も独特です。

色々な決まり事を経て、日本刀は登録が許され、誰でも所持する事が出来ますが、登録証と日本刀に合わせ、所持者の変更が必要な事が特徴です。

それ以外は、常識の範囲内であれば、特に何か困るような事はありません。

日本刀における実用刀は、どのように研いで使うのかで、性能が大きく変わります。

私自身、過去に腕のある方から、試斬を教えて頂き、実際に色々な斬り方を試せるくらいまでは、十分に勉強をさせて頂き、実用に向いている研ぎとは何なのかを模索してきました。

極力軽く、そして正確に斬れる刃は、体の負担を減らし、次の動作に移る際に、無駄な力が入っていないので、楽な動きになると思います。

斬れない状態で必死に斬ろうとして、余程の腕が無いと斬る事は出来ません。

まともな試斬で刃筋確認をしたり、大会に出て成績をと思えば、使いやすい状態の日本刀の状態にしておく必要性があります。

稀に、振り回して使うので、適当に研ぎでも大丈夫とおっしゃる方もいらっしゃいますが、それは初期の基本形状があり、少し研いだくらいでは形が崩れず、なんとか使えているだけであり、そういった研ぎではまともに斬れるようなものではありません。

多くの日本刀は、実用としてみると、研ぎの構成がおかしい部分が多く存在しているので、その調整をしつつ、斬れる刃を付けるのが私の仕事です。

安く済ませる方法もありますが、最低限度の必要な要素を無視した研ぎでは、まともに斬れませんので、その状態で必死に斬ろうとして、どんどんフォームを崩す事や、無駄な力を入れて振る癖を付けない為にも、早めの対策を行ってください。

当方で行う日本刀研磨は、「居合抜刀用面精度研磨(斬れ味重視)」と、「居合抜刀用面精度研磨(通常の磨き)」と、「おまかせ研磨」があります。

居合抜刀用面精度研磨は、私が色々な刃物の研磨の研究をしてきた事を盛り込んだ特別な研ぎで、面の研ぎ方により精度を作り出すのが独特で、それとの組み合わせとして、拵の修理や調整も実用刀に合わせた設定を行えるようになっています。

その中でも斬れ味重視は、斬り損じをしないレベルの上級者向けの設定となっており、過去最高の斬り込みや斬り抜けを実現しています。

居合抜刀用面精度研磨の通常の磨きでも、十分な実用レベルは体験頂けると思いますので、そちらをご選択ください。

まともな研磨をと思う方は、これらの居合抜刀用面精度研磨をご選択ください。

なお、順番待ちがありますし、作業自体も1~2カ月程度は必要となるケースがありますので、混雑具合に合わせて納期がそれなりに必要となります。

おまかせ研磨は、内容の指定やご要望はお伺い出来ませんが、拵の簡易修理から入り、歪取りや修正研磨、仕上げ研磨までを、使える性能に持って行く、比較的簡易的な作業を総合的にまとめたお手頃な内容で、納期は混雑無しで1~2カ月としています。

しかし、ご依頼が多く重なると、意外と納期が長くなる事もありますが、これ以上は簡略化をした内容にするつもりはありませんので、試斬専用でとにかく使える状態にする事を目的としつつ、最短納期が狙える研磨も現在開発中です。

こちらに関しては、ほぼ完成していますが、あとはどのような形で、おまかせ研磨との違いを出していくのかが、まだ検討の段階となっております。

このように当方では、レベルや求められる内容に合わせ、幅広く対応が可能なので、様々なお客様がいらっしゃいます。

実用刀というジャンルをご理解頂けるのであれば、ご希望に沿える範囲が必ずあると思いますので、是非ご利用ください。

 

2024年6月 6日 (木)

今年は良い発見が多くあります

研究の部分に関しては、ここ数年、特別に意気込んでやっている訳ではないので、理由は全く分かりませんが、非常に良い発見が多くあります。

その発見は一人で満足しているような事ではなく、これを知って実際に実技として表現が出来れば、かなり良い方向へ変わるという技術です。

色々な方面から情報は頂いていますが、当たり前にその手の事が行われているというお話は無く、それに近い結果のものはないようです。

信用出来る方面からの情報筋は、色々な意味で非常に助かる事が多いです。

あとは、道具を一部変えた事で、仕上がりがかなり良くなった範囲も完成しました。

こちらは予想と見込みから完成出来た内容なので、努力によるものですが、これの発展も更にいけそうなので、少し先にはなるとは思いますが、そちらも完成させたいと思います。

 

2024年6月 5日 (水)

現代刀がおすすめです

実用刀として日本刀を使用する、居合、抜刀、試斬、の範囲に関して言えば、現代刀をおすすめしています。

古い刀の場合、今までどのような使い方をされてきたのかが分からず、製造の構造も読めない場合がありますので、性能や寿命も読みにくいです。

絶対に使わない方が良いのは?と良くご質問がありますが、私がおすすめしないのは、新々刀期のごっつ過ぎる日本刀であったり、古刀と呼ばれる室町期のものなどです。

新々刀の中でも、体配的に使える物はもちろんありますが、全体的に肉厚で重さも重く、そもそも切断に向いていない形状です。

また、一般刃物に良くあるように、そこから削って薄身にする事が出来る構造とは限りませんので、使えなくなる可能性もありますので、そこから改善をするにしても、攻められる限界がありますから、現代における実用には向きません。

また、古刀に関しては、皮鉄量が明らかに少ない物が多く、腰のしなりについても弱く、くの字に曲がりやすいなどの理由もありますので、切り損じた場合の直しも難しくなります。

それ以外でも、現代刀以外は、基本的におすすめをしない声は多くありますが、歴史物として重要な物でもありますし、時代によっては人を斬っている可能性があったり、飾りのように作られていて性能が良くない物もありますから、色々な意味を考えると、現代刀は安心して使えるという部分が大きいでしょう。

現代刀でも性能の差は幅広くありますが、使えないという事はあまりないと思います。

そして何より、現代刀を購入して使用する事は、今後の時代に日本刀文化を引き継ぐ為に、刀工さんや研師さんが食べていく道を作る事になりますし、そういった意味では貢献も出来ると考えるからです。

是非、現代刀を購入して、日本刀業界を残せるようにしていきましょう!

実用刀ではなく、美術品としての日本刀となりますが、当店で販売中の刀が現在は一振りありますので、宜しければこちらから是非ご覧ください。

 

2024年6月 4日 (火)

現状ではまだ復活は難しいです

過去に開催をしていました、「研ぎ教室」の件についてですが、今でもたまにお問い合わせを頂きます。

ご希望の最中地点をレベルに合わせた設定として、個別指導として行っていた研ぎ教室は、当時は色々な範囲の方々からご利用を頂きました。

研ぎ方をただお教えするのではなく、初期段階での状態の改善をしてから、最低限度はまともな状態を知っての研ぎを行う事や、砥石の使い方として砥石の種類や特性、砥石の面修正や保管管理など、それらも含めてお伝えをしていました。

あの時、ご利用になられた方から、改めての利用予約の事や、ご利用になられなかったけれど、是非行きたいと思っていたという方、以前の開催は知らなかったけれど、やって貰えるか質問をされている方など、結構注目を頂いているようで、ありがたいと思いますが・・・。

開催につきましては、現状の状況ですと、難しいとしかお話出来ません。

まず、場所をあける事が出来ないというのが、一番大きな問題点ですし、コロナ以降、狭い領域で近い対応を行う事も、好ましい状態とは言えません。

また、機材や道具など、現在はお見せ出来ない内容も増え、それを毎回片付けられる程、スペースの確保も出ない事もあります。

もちろん業者さんに関しても、作業場へ立ち入る事は、通常はお断りをしています。

他にも色々と理由はあるのですが、一つ解決をしたくらいでは、開催できます!とは言える状態ではない事を、改めて記載しておきます。

この辺りは、ご期待に沿える活動が出来ずで、本当に申し訳なく思いますが、ご理解とご了承を頂ければ幸いです。

 

2024年6月 3日 (月)

こんな事があるのか・・・

最近良くある仕事の中で、硬度が高すぎて研げず、磨きもまともに入れる事が難しい刃物があります。

それらを手にした方達が、まともに実用品として使えるとは思えません。

耐摩耗性が高いからといって、必ず永切れするとは限りませんし、研ぎきれない刃物は、結局性能を出せませんから、それではその刃物は生きて来ません。

機械や砥石を駆使し、作業をする側からして、そう感じるくらいですから、本当に軽く考えてそういうものを購入すると、後で大きな後悔をします。

これは使い手側の腕に頼る部分ではないので、製造側が一方的にそれを良い製品として、思い違いをしているだけでしかありません。

私はそこそこ指先に力を込められるタイプではあると思いますが、手がしびれるくらい磨いて磨きが入らないのは、本当に大きな問題です。

早くそれに気付いて、改良をしないと、後でとんでもない事になるでしょう。

それぞれの鋼が持つ性能は、必要以上にいじってはいけないという部分もあるので、生かせる範囲を越えない事が必要です。

直接ご意見を出来る関係であれば、こういった事は見逃さずに伝えますが、そうではない場合には何ともできません。

ご購入されてお使いになられているお客様が、直接声を上げて改良の必要性がある理由を伝えてあげましょう。

それでも伝わらないようであれば、他のメーカーに早く切り替えた方が良いと思います。

良い方向への改良は誰もが受け入れてくれると思いますが、いわゆる改悪になってくると、多くは勘違いしちゃったんだな・・・と、見切りをつける例が多いそうですから、そういう声が届くうちでなければ・・・。

 

 

2024年6月 2日 (日)

思っているよりも1はとてつもなく大きな数字です

刃物の研ぎの事は、素人時代から検証や研究をしてきていて、色々な方達とお話をしてきています。

そんな中で出て来る数字は、「μ(ミクロン)」や「n(ナノ)」のお話が特に多いです。

そういった研究を重ねている方達とお話をすると、一般的な考えやそこまで見えていない人達からすると、頭がおかしくなってくるような数値かもしれません。

しかし、それくらいの領域でモノを見ていないと、刃物は良くならないというのが現状です。

多くの事は、情報として出ていませんから、始めて聞いた時には、本当に驚きました。

もうかなり前のお話なので、細かい時期は忘れましたが、そこまで必要とされず、言われもしていなかった時代に、そういった研究はもうかなり進められていました。

私はそれを早くから知り得たので、研ぎの持つ責任という部分に関して、十分に理解しながら、研ぎの研究をしていました。

本格的に何かの刃物に対し、良い刃というものは何か?!と追及していくと、荒い刃の中にも良し悪しがあり、超細かい刃の中にも良し悪しがありますが、特に難しくなっていくのは細かい方です。

極限の細かさをただ求めるのではなく、刃が揃う事が重要ですが、それが可能な砥石は本当に少なく、研いでいると刃にばらつきが出てしまう事もあり、結果として使える砥石は限られていましたが、それは現在でも同じです。

あとは使い方により、かなり違いも出て来るのですが、数値や細かさだけではなく、砥石が持つ性質にも着目する必要がありますし、本当に難しい世界です。

ほとんどの人には目に見えず、数字も意味が分からないで終わるような範囲ですが、これを理解するのとしないのとでは、研ぎに対しての考えは大きく変わります。

分かりやすい所で言うと、同じ刃物に対し、同じ下地研ぎを段階的に行い、最後の砥石だけを変えて検証したとしましょう。

そこまでやれば、確実に違いが分かるので、あとは研ぎの時間で調整をするなど、どこまで刃が安定するのか、その辺りでの判断が限界です。

そして、何かの対象物を切ってみて、切れ味が良いと考えるのが、一般的な範囲での検証の限界です。

私が行うのは、それに似たような形ではありますが、そもそもそこまでの流れで、砥石を変えてどう違いが出るかは、切るまでもなく、研ぎ目でほとんど分かりますので、これは無理だろうなと思うと、その砥石での研ぎは大体失敗しています。

何で判断するのかは、細かくお話をするのが難しいのですが、砥石と刃物が起こす振動や、引っ掛かりのある粒子による研ぎの違和感、水と研ぎ汁の関係、刃物が持つ光沢や濁りの関係等、その他も色々含めて、意外と判断基準は多くあります。

ですから、それらをクリアした時点で、切れ味が良いのは当然という頭から入りますので、よく切れるかどうかというのは、そもそもその時点でもう見ていません。

どう切れるのかが大切であり、それが切断物の違いに対して、刃がどう作用するのかを表す大事な部分です。

言われてみると、そういう感覚があったかな・・・と思う方はいらっしゃると思いますが、切れ味の中にも、硬い感じや柔らかい感じがあります。

これは、刃が硬いか柔らかいかでおっしゃる方もいますが、決してそういう事ではありません。

刃の性質と砥石による研ぎの傷目の関係で、刃がどのように作用しているかの問題です。

実際に同じような刃物の中でも、やわかめの刃物が硬い切れ味に感じ、硬めの刃物が柔らかい切れ味に感じる事もありますから、刃物硬度の意味ではない事が言えると思います。

切れた時に無理やり切っている感覚と、そこにある何かをほぐすように切っていくような感覚もありますし、何事も無かったかのように切っていく感覚もあるでしょう。

これらの表現は、色々沢山ありすぎて、その時になってみないと分かりません。

それこそ人が持つ感覚の部分で、良い研ぎとは何かを考えていくと、現状で思う限界地点は、細かさの話ではないと思っています。

どうすればそういう研ぎが可能なのかは、刃物を使う側にしか分からない事なので、それを理解して研ぎを行える為にも、私は刃物をそれなりに使えるようにまずしていました。

いつかこういった研究結果を、発表出来る時が来るかもしれませんが、細かくまとめる時間も無いので、だいぶ先のお話にはなるでしょう。

分かる人にしか分からない刃物の性質や研ぎの事は、本当にそれを求める方にお届けしたいと思っていますし、ある意味では極論的な部分でもあるので、普段の研ぎではそれらは含めた研ぎを行いません。

そうはいっても、そこに通ずる道筋の研ぎは含めているので、ある程度は感じられる方もいらっしゃるようですし、なんだかよく分からないけど、切れ方が他と違う感じがする・・・のような言われ方をした事があるので、全く除外している訳では無いと言えるでしょう。

私が行う実用研ぎは、こういった研究も行いつつ、安定化へと繋げられるようにしています。

本格的な細かい調整まで含むと、自分で所有をして、毎回のように使っているような、慣れている刃物の研ぎは無いので、まず性質判断からしなければなりませんし、時間とコストがかなり大きくかかりますから、簡単にはお受け出来ませんので、ご理解とご了承を・・・。

 

2024年6月 1日 (土)

今までいくつか解明した刃物の特性と解決方法

刃物の研ぎを良くする為であったり、どうしても結果に繋がらない場合に、刃物の性質が関係している場合があります。

刃物自体の性質の問題は、どうしようもないという形で、諦めるケースがほとんどです。

もちろん、ギリギリまでやれる事はやりますが、それ以上は無理という意味です。

もっと上があるのに、その刃物では出来ない理由は、製造過程にある場合と、鋼材にある場合があります。

いずれの場合も、購入した以降は、どうしようもない部分の話ですから、多くの方は諦めていました。

中には、その解決方法として、今までより良い結果になるよう、性能の引き上げが可能なものも、いくつか発見していますから、それらに関しては、刃物や砥石の研究をしてきた事が、大きく生かされています。

総合的な勉強や研究をしてきたからこそ、そういった解決方法が見つかった事で、一部だけの事に対し、知識と技術があるだけでは、まず見つけられないような内容と言えるでしょう。

私の持っている知識や技術は、ほとんどが表には出していません。

出す必要が無い事ですし、出す機会も無いですから、今後も出す事は無いでしょう。

ただ、今後の仕事として、刃物の研磨などを考えている方に対し、有料で色々な事を講習をする場合には、必要に応じて解放はしていきます。

私のお付き合いの中で、ほんの僅かな範囲の方だけは、知識や技術の交流をしていますので、そういった話をする事はありますが、実際にその知識と技術を完全に持ち合わせていないと、説明をされたところで理解は出来ないような内容がほとんどなので、その内容がどれだけ凄い事なのかは、多分分からないと思います。

砥石も色々なタイプがあって、ピンポイントでこれを使わないと・・・と言うような、本当にたまたま見つかった結果もありますから、あまり偉そうには言えないのですが、それでも世に解決策が出ていない事を考えると、大きな発見であろうものは、いくつか存在していますので、そういったものを今後も見つけ、いつかそれを理解出来る人達が現れたら、生かしてもらう場面もあるかと考えています。

上手い下手で解決されてしまうような、刃物の世界の技術には、色々な研究の成果である事は多くあります。

本当に細かく見ていくと、それはとても難しく、良く分からない世界になっていきますが、それに関しての原理と解決が見つかると、どうしてその刃物はこうであったのか・・・と言うのも、なんとなく繋がって行きます。

逆に、最初から構成を理解していた事により、解決策を見つけた例もあり、この辺りは一般的な研ぎ屋の研究レベルでは無いと、一部で賞賛を頂いています。

それでも私は、ただの研ぎ屋として、良かった!助かった!と言って貰えるような、そんな仕事を続けて行きたいと思っています。

以前に何度もありましたが、こんな小さな研ぎ屋が、なんでこんな事を知っていて、こんな事が出来るのか?と。

その手の言い回しは、人に話すと失礼な言い方だとおっしゃる方もいらっしゃいますが、私はそうではないと思っています。

実際にこんな小さな規模でやっている者が、そんな事を出来るとは誰も思わないでしょう。

しかし、良く考えてみてください。

企業などに就職をすれば、その領域の中で、それ以上の知識や技術を持つものが、育つはずはありません。

しかし、むしろ個人で小規模で、誰にも決められた流れが無い仕事や勉強をするからこそ、そういった知識や技術を学べて、色々な事を全て一人で出来るのです。

面白くて大いに役立つ知識と技術は、お客様からも頂く事がありますが、それでもお客様と共に育てて来た、研磨や研ぎの世界となっていますし、使い手側も使う知識や技術を得られますし、良い事が多くなります。

私は素人やプロとブログで枠組みを書く事もありますが、それは分かりやすく分けた話であり、実際の所は素人がプロを遥かに越えるような知識や技術をお持ちの方もいらっしゃいますから、負けるわけにはいきません。

年齢や性別も関係なく、出来る人の意見はしっかり受け入れていますし、優れた知識や技術は、いくらでも受け入れをしていますので、頑固なように見えても、かなり柔軟な頭は持っている方だと思います。

 

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