分かっていても認めたくないのでしょう・・・
日本刀研磨の多くは、現代では色々な加工方法が行われており、機械加工や薬品も使われています。
一流とされる研師の仕事では、それらは無いだろうと言われていますが、安い研磨関連だと両方使われているのは当たり前とも言われています。
そうでなければ、わずか数万で最上級作業や上級作業とほぼ同じ事をやっていたら、コストがどう考えても合いません。
売れない研師は、品評会で名誉ある賞を取らない限り、知名度は上がりませんし、高い仕事の依頼は来ませんから、生活の為に安い研磨を受けていますが、それを勉強だからといって、何も使わずに手作業だけでやっているとしたら、いくらなんでも安すぎます。
ただ、こういったお話に関しては、研磨をする側は理解していたとしても、利用するお客様側は認めたくない部分があり、日本刀研磨は伝統的な技術だから機械など使うはずがない!とおっしゃる方も中にはいらっしゃるようです。
そうはいっても、刀工が行う鍛冶押しでも、機械加工は行われている場合がありますが、それを隠さずに行っている方も多くいらっしゃいます。
日本刀研磨においての機械加工は、下地作りに良く使われ、場合によっては仕上げの途中まで行われる事もあり、刃文や地を多く出す為には、下地や仕上げ研ぎが終わった後、薬品を使っている例も多いです。
その先で上手く仕上げを行うと、薬品を使った事は分からないと言われていますが、あまりにも凹凸がはっきり出過ぎていたりすれば、薬品を使っている可能性は高いと思います。
日本刀を見て使う範囲だけだと、分からない事も多いかもしれませんが、私は研ぐ事が仕事で、刃物の状況を直接見ていますので、匂いも感じ取っていますから、薬品の存在を確認できます。
中和すればある程度は分からなくなるのだと思いますが、それでも残る部分があり、その上から仕上げの加工を行っても、研いだ時に匂いが出てきますので、それは明確に分かります。
しかし、これらを悪く言っているのではなく、昔は出来なかった事が今出来ると思えば、それも良しと考えていますので、最高レベルの美術品や、それに近いレベルのものに対する作業以外は、それで良いと思っています。
結局仕上がりだけを見る人が多く、その刃物がどういう加工をされ、何を意図しているのかは分からないので、最終的な見た目だけの判断をし、綺麗だから大丈夫と思うのです。
それは他分野の刃物でも、仕上げだけで判断する方が多いので、同じ事だと思います。
何もかもを疑っていては、良い物も悪く見えてしまう事はありますが、加工を正しく知って利用するのであれば、それはむしろ良い事だと思っています。
当方では、過去に何度か記載をしましたが、おまかせ研磨に関しては、大きく加工が必要な場合は、機械加工を加えています。
(※薬品については、意図したものとしてお客様に求められない限り、当方では使用する事はありません。)
現在は、機械加工の幅を減らし、手作業率が上がっていますので、欠けや大きな形のズレの修正範囲のみに限られますが、使用をする事はあります。
その後、手研ぎに入って、磨きと刃付けを行い、それと並行して拵の修理も行っていますが、価格を抑える為には必要な部分であり、上級の研磨との差を付けています。
更に上級の研磨だと、精度を上げる為の特別な研磨も行っていますので、色々な部分で良さを引き出す作業が含まれているので、それ以上に差があるとも言えます。
機械加工を適当に行えば、かえって悪い状況になる可能性は高いので、もちろん上手い下手は出てきますが、私は機械での加工を他の刃物類でも多く行っていますし、それをベースにした手研ぎでの高精度研磨を確立していますので、頑張っても手作業で必要な精度が出せない方よりは、明らかに私の機械加工の方がレベルは高いはずです。
当方の日本刀研磨は、美術品に対して行う研磨ではなく、実用品に対して行う研磨ですから、それが問題になる事もありませんし、必要性能をより引き出しやすくなるのであれば、むしろ歓迎される方が多いと考えています。
他刃物類でもそうですが、手作業を売りにしていても、それ相応の結果が出る研ぎばかりではありませんから、機械加工も加えつつ、手研ぎの良さをプラス出来れば、それは良い事だと考えます。
そもそも、機械加工が一切行えない状況で、難しい直しは行う事が困難ですから、総合的な技術として幅広く見れば、機械加工も必要不可欠と言えるでしょう。
現在のおまかせ研磨でも、内容を考えるとかなりお得だと思いますが、まだ安く出来る方法はないか?とのお話は稀にあります。
これ以上落とすと、当方での加工技術を明確に発揮できなくなる部分があり、折角のご利用であればと思う所はありますが、現代における価格の上昇を考えると、誰もが安くある事で助かるのは十分に理解出来ます。
そこまで落とすとなれば、「使い物になる」というのが必要な要素になるので、それ以下にならないようにしなければなりません。
その辺りに対応できる形で、どこまで抑えられるかは分かりませんが、新しい研磨サービスを検討していますので、完成までお待ちください。
機械加工率が高いものにはなると想定しますので、研磨自体の価値が上がる事はまず無いと思いますが、実用性能を極端に落とすような事無く、低価格で短期納期の加工をご用意し、実用としてのご理解のある方に、色々な負担なくご利用を頂ける形を作れればと思っています。
あくまでも実用として、使えない研磨でお代を頂くつもりはありませんので、その辺りは十分に結果を残して出来るかどうかが、重要な部分だと考えています。
もし低価格で短期納期の研磨が完成した場合、現状のおまかせ研磨に関しては、グレードアップをするか、廃止になる可能性もあります。
その辺りは、実際に当店の研磨をご利用頂いているお客様から、ご意見を頂戴出来ればと思います。
今後も色々な企画をし、このように幅広く対応をと思っていますので、研磨の際には是非当店のご利用をご検討して頂ければ幸いです。
様々な状況説明や、必要項目の内容をお話し、お見積りを作成していますので、実際にご利用を頂ければ、現状を知り回復が可能な範囲が多くあると思います。
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