組織の差
刃物の良し悪しは、単純な硬度や靭性の問題だけではなく、金属組織の部分に影響されています。
細かいお話をすると面倒な世界なので、簡単にだけ説明をしますと、組織はより細かく密集している状態が理想です。
格安のステンレス包丁が良く無いと言われる理由は、炭素量が低く、鋼というよりも、ただのステンレス板のような状態である事です。
サビに強い事は利便性がありますが、包丁である以上、まともな性能が出ない時点で、それは刃物としては低級という事になります。
刃付けが出来ない訳ではありませんが、繊細さはありませんし、刃先に強度もありませんので、永切れは期待できません。
そういった格安ステンレス包丁と、上級な鋼の包丁を比較して、一発勝負なら繊細で良いと思われるような、同じ刃が付けられると思っている方もいらっしゃいますが、それはそもそもの間違いです。
同等の仕上がりにする為に、同じ砥石ではまず不可能ですし、繊細になればなる程、組織の悪さがはっきり出ますから、そもそも良い刃を付ける事すら出来ません。
限界の切れ味を狙う場合、更にその差は大きく開き、繊細に研げば研ぐ程に、切れ味が悪化する場合もあるくらいです。
こんな切れ味が!と、超低級ステンレス包丁を使用し、やっている例は良く見受けられますが、それは別格に良い切れ味になる事は絶対にありえません。
そうでなければ、超高級で上質な包丁の存在意義は無い訳で、構図が変わらないという事は、そういう事です。
切れていると思える状態は作れますが、レベルの高い包丁をなんとなくそこそこで研いでも、その切れ味を遥かに越える事は十分可能です。
そもそもの見ているレベルの差がありますから、根本にある基本性能の事を考えれば、同等になる事などあり得ないので、現実がどうなのかを良く考えましょう。
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