こだわりのポイントです
刃物の研磨は色々な種類がありますが、特に難しく重要なポイントは、片刃の裏にあります。
ちなみにハサミ類は2枚刃なので片刃とは呼ばれませんが、片刃の合わせたものですから、それも加工側から見れば片刃の一種にはなります。
片刃の裏側は、和式刃物やハサミ類の場合、裏側にくぼみを作る「裏鋤(うらすき)」という作業がされています。
現代ではほぼ機械加工が行われていますが、元々は機械加工ではなく、銑鋤(せんすき)と呼ばれ銑という道具を用いて鋤作業を行った事が発端です。
ちなみに現代でも、一部の刃物には、その銑鋤が行われており、これは機械では出せない大変良い鋤作業が施されていいたりしますので、機会があれば是非そういったものも手にしてみてください。
話を戻しますが、裏鋤の加工に関しては、私は非常にこだわりが強くあります。
元々は手作業のみで刃物研磨を学び、無い道具は自分で作ったり、他にある物を代用していましたし、機械も専門のものを持っていなかった頃は、違う事で使う機械でなんとなくそれっぽい事が出来るように、何とかしていたという時期もありました。
その裏鋤により、全てが決まると言える程、本当に大切な加工部分になりますから、これを確実なものとしなければ、未来は無いというくらいに考えています。
実際に現在、色々な刃物の加工において、裏への鋤作業への評価は非常に高く頂いており、表側の正確な作業と合わさっての良さとして考えています。
元々表面の研ぎに関しては、機械が無い時代では、全てて作業で行う勉強と研究もしており、ゲージを使って形状と精度の計測まで行っていましたので、使った時に違和感が出ない事や、研ぐ場面で面の形状を一定化しやすいなど、その辺りは特別な扱いを頂いています。
裏の加工には、小さい径で複数の列を作って削る方法と、丁度良いと見る径に合わせた機械でそのまま径を作る方法がありますが、当方ではいずれも技術的には可能です。
特にご指定が無ければ、削りすぎを防ぐ意味で、裏鋤の中の全てが一定化していなくても、必要箇所の鋤が完了していれば、そこで終わりにする事もありますが、それは将来的な削りシロを残す意味でもあります。
ですから、それが汚いとか下手という事ではなく、実は意図的に今刃とならない場所の事は、スルーして加工をしているという事です。
まず歪取りと裏鋤の結果があり、そこに表がついてくるという状態だと思って頂けると、基準となる裏が如何に大切なのかという所です。
裏鋤は浅めに作る方法と、深めに作る方法がありますが、私がどちらかというと深めにします。
その理由は、お客様が自ら研ぎを行う方が多い為、その際に浅い裏鋤だと、扱いが難しかったり、少し鋤がズレているだけでも、研ぎに支障が出たりと、悪影響を及ぼす可能性がある為、ある程度裏を多く研いでしまっても、瞬間的に裏が広がらない意味もあり、どちらかというと深め寄りにしています。
浅めの設定にする事もご要望に合わせて行いますが、その場合、使い手の研ぎが上手である事は必須です。
実際に過去の時代、裏鋤が浅かった事もあったのですが、元の精度が悪い上に、使い手が上手に研ぎを行う事が出来ず、うらがグチャグチャになってしまう例も多々ありました。
現代では、裏鋤は浅すぎるものは減ったと思いますが、軽く仕上げ砥石を当てる程度とし、裏側から明らかな研ぎを行わないとする事で、状態の維持がしやすくなっています。
ただ、基本精度の悪い片刃が多く販売され過ぎていて、素直に真っ直ぐ裏をと思っても、その状況を作り出せず、致し方ない形として、裏押しを多く行う例は少なくなりません。
そういったお客様には、基本形状の作り直しから、全面整形をおすすめしています。
たまに新品のような状態に戻したいと言われる事がありますが、新品状態の多くは、状況は決して良く無いので、新品に戻すという事は、今より精度落ちの可能性もありますから、良く状況の把握をして、必要箇所に必要な基準となる面や線があるか、その辺りの確認は十分に行いましょう。
可能であれば精度の高い定盤の上で測定する事が理想ですが、一般的にはその手の物を持っている方はほぼいらっしゃいませんから、目で見て刃線のズレや面のズレを見られるようになれば、そこそこまでは判断出来るようになると思います。
きっちりと修正が出来ている精度の高い砥石と、正しい研ぎが合わされば、それなりの精度は出ているはずですが、いずれも簡単な事ではないので、研ぐ事で基準とする事が出来るようになるまでは、色々な方法で面や線の確認をしていきましょう。
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