力の伝達
実用の日本刀における試斬は、多くの方は刀身や刃付けが全てと思われている事と思います。
しかし実際の結果を見ると、拵に依存する部分は、1~2割程度あると考えられます。
当方では、実用の日本刀の為に、拵の修理や調整を行っていますが、これを実際にお受け頂いた方々からは、安心感と感覚の伝達が変わり、斬れ方も大きく変化したというお声は多いです。
もちろん当方で研磨も同時にお受け頂いていれば、そこの改善による斬れ味の変化は大きいと思いますが、それだけではなく、その研磨した刀身を生かす為に、拵が緩いようでは性能が出ません。
目釘無しでも抜けないようなしっかり感を出し、各部位の振動を極力減らす事で、刀身からの細かい情報が柄拵に伝わってくる状態となりますから、それが良い斬となった場合と、悪い斬となった場合とで、明確に分かるというのもあるでしょう。
私自身、研磨の研究と合わせ、上級者に指導を頂き、試斬を学んでいた時期もありましたが、その時の経験として色々な事を試し、皆さんの刀身や拵も見せて頂いて、条件の違いなども見て来ました。
その結果、柄拵で無駄に力を吸収してしまう条件も見つけ、折角の振りを生かす為にと研究し、それが今の拵の修理に繋がっています。
何かが動くという事はそこで力を吸収してしまいますし、状況により想定外に刃の向きが変化してしまったり、思うように斬れない要因ともなっていますから、拵がしっかりする事は、良い事の方が多いです。
なお、当方での拵の修理後は、外してのメンテナンスは推奨しません。
外してつけてを繰り返すと、柄拵は各部が緩みます。
上手い外し方とつけかたを理解している方であれば、劣化は少なく済みますが、少なくとも緩みは出て来ますし、適切なピンポイントの固定位置が分からない方が叩き入れると、他部位にまで悪影響が出てしまうので、基本的には触らず、何かあれば当方で確認や作業をしますとお伝えをしています。
そもそも実用刀の場合、拵を外して、油を全面塗り直し、白鞘に納めて保管する必要はありません。
白鞘は長期的な未使用期間に、保管管理をする意味としての役割で、日頃から居合抜刀試斬にお使いになられる方の場合、外す必要性はありません。
なお、拵を外さない事で、ハバキ付近は油の引き直しが出来ないとおっしゃる方がいらっしゃいますが、内部に油は残りますから、水でも流し込まない限り、大きくサビた例は見た事がありませんので、その辺りはご安心ください。
過去の時代は油が天然油だった事もあり、酸化が早く油の効力も低かったのですが、現代は刀剣油のほとんどは合成油になっており、長期的な保管が可能になりました。
スプレーオイル系でも十分な効果は出ますし、フッ素やシリコン配合のものでも、それがサビに繋がる事はないので、問題なく使用できます。
絶対に使わない方が良いとされるのは、556のようなサビを落とす事を売りにするようなものです。
サビを浮かしたり落とす落とすような効果があるものは、更にサビを誘発する事は有名な話ですから、絶対に使用しないでください。
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