ご自身で刃物を研ぐ際に、気にされている事は何でしょうか?
・砥石の面をしっかり直す
・砥面の部分的減りが無いかどうか
・刃物と砥石の相性が合っているか
・砥面にある水分量が適切かどうか
・研ぐ圧力は適切かどうか
・この砥石で刃物をどのくらい研ぎ進めるか
など、この辺りを確認できていれば、まず大丈夫だと思います。
ただ研ぐ事だけに集中せず、色々な状況を把握し続ける事で、こんなはずではなかったという状況を回避できます。
色々とポイントはありますが、それを話し出すととんでもない時間がかかるので、割愛させて頂きます。
僅かな時間の中で、色々な情報を拾って研ぎを行うので、それを全て話していたらキリが無いのです・・・。
あと、ここに記載はありませんが、他に注目すべき点は、音です。
私が思う音はいくつかあり、研ぐ時の音、切り試しの音、実際に使う場面での音、です。
研ぐ時の音は、ジャキジャキのような攻撃的な音や、ガリガリのような音は良くないです。
荒砥を使う場合、この手の音は鳴りやすいですが、実は中砥や中仕上げ砥レベルでも、このような音を出して研ぐ方が実は多くいらっしゃいます。
ちなみに刃物を使うプロや、刃物を研ぐプロでも、この手の研ぎ方をする方がかなり多く、それを理解していない時点で問題外です。
また、切り試しの音は、私は比較的目の揃ったコピー用紙を使いますが、これがまともに切れない事などまずないので、そんな事を試しているのではありません。
切った時の音や、わずかにでも引っかかる事がないかなど、そういう部分を試しているだけです。
稀に包丁の切れ味のテストで、新聞紙のような薄く密度が低い紙で試している例を見ますが、あれは大きくスライドして切っているので、切り試しになっていません。
薄くて切るのが大変でしょ?と言われた事がありますが、簡単に切れすぎてテストにならない状況です。
そもそも紙を切るだけで、なぜ凄いスピードで斜めに必死で切っているのでしょうか?
しかも凄い音をたてて・・・。
刃の性質を確認する為には、私はスライドを極力無くし、ただゆっくりと紙に向かって垂直に落とすイメージで切って進み、軽い音がして紙の切り口が綺麗になるかを見ているので、良く皆さんがやっている斜めに大きく動かしながら切れない音を大きく鳴らしているような事とは別物ですので、紙で切るテストだからと一緒にするのはやめてください。
また、超仕上げクラスや天然砥石まで研いでいるのに、とんでもない音を出して切っていたり、紙が刃物からどんどん避けていく状態を良く見るかと思いますが、その時点で理解のある方は察している事と思います。
そんな状態で実際に刃物を使ったら、切断対象の物への負担は大きく出てしまいます。
あの程度の切れ味なら、中荒砥程度でも出来ますし、中砥範囲でも刃が整っていれば、それ以上に綺麗に最小の動きで切れるはずなので、ああいう結果のものは本当に無意味な研ぎでしかないのです。
実際に一流のプロと呼ばれる方達に、過去に刃物の研ぎや切れ味の指導をした事がありますが、ご自身のご自慢の刃物に、ご自慢の研ぎを行って、どや顔で見せてきた方がいらっしゃいましたが、帰りは肩を落として帰って行かれました。
あちらこちらで皆から凄いと言われてきたそうですが、世間とはそんなものなのです。
研ぎとはただ切れ味だけで語れるものではなく、実際に使った時にどうなるのかが大事です。
ただ紙を切るだけなら、もっと切れるようにする事は出来ますが、それが最終目標ではないので、この紙をどう切れるとどういう刃なのかを把握して、それをこの状況では良いと思えるかどうかで考えます。
そういうものをひっくるめてのまともな研ぎだと私は考えますから、くだらないパフォーマンスに騙されないでください。
紙が切れたら良く切れる刃という認識は、完全に間違っています。
適当に研いだとしても、最低限度の状態さえクリアしていれば、当たり前に紙は何事もなかったように切れるものです
ちなみに、多くの方達が先ほど書いたような研ぎを行って、自慢げにパフォーマンスをしていますが、そこには大きな欠点が明確にいくつか見られます。
その改善点に気付けば、もっと良い切れ味と使い勝手に出来るはずなので、私はそういう方達を馬鹿にしているのではなく、現状では勿体ないので、もっと研究をしてあと少しの改善で、評価を高めましょうと言いたいのです。
当店の常連様は、気持ち良く切れる刃とおっしゃって頂けていますが、多くのメーカーや研ぎ屋が超仕上げまで研いでいる所を、私は中仕上げ程度までしか研ぎません。
それ以上研ぐ事に、何も意味が無く、むしろマイナスが増えてくる事もあるからです。
超仕上げや天然砥石で何もかもの刃物を仕上げる事は、この分野の勉強や研究を始めてから、僅か数年で私はやめました。
研ぎを覚えていき、段々と細かい砥石の仕上げにこだわり始め、まともな研究を進めた方は、細か過ぎない仕上げの良さを理解して、超仕上げを辞めたという方も多いです。
それが今に繋がる結論です。
もちろん、ご依頼があれば、超仕上げや天然砥石での仕上げも行いますが、そこまでやらなくて正直十分だと思います。
そんなはずは無いと思う方は、試しにいくつか下の#の砥石で丁寧に仕上げきってみてください。
それが出来るようになれば、それ以上の上の研ぎがそこまで必要だとは思わなくなると思います。
鋭さや細かさだけが切れ味の全てではありません。
ちなみに、大工道具や木工関連の刃物類は、基本的には超仕上げクラスまでの研ぎを行った方が良いので、その辺りは別物と考えてください。
こういった事を理解してこそ、人に研ぎをご提供出来たり、お代を頂けるというのが、私は職人だと思っています。
私が思う確実で安心して使える研ぎを、まずは体感して頂きたいと思います。
使用環境が最低限度整えば、納得の切れ方を感じて頂けるでしょう。